平成27年度後期終業式 式辞(お話)

平成28年3月23日

後期終業式 式辞

兵庫県立芦屋高等学校長 岡田 学

 

平成27年度がまもなく終わろうとしています。みなさんは、この1年間をどのように振り返ろうとしているのでしょうか。
1月の集会でも、“学ぶ意味”についてお話をしてきました。今日もその続きを話します。

昨年に本屋大賞を受賞された上橋菜穂子さんの『精霊の守人』がNHKでドラマ化されたと言うことで、話題になっています。上橋さんのファンタジーの世界は、私も大好きです。上橋さんは文化人類学者でもあり、アボリジニについても長年研究をされています。だから、上橋さんの描く世界は、ファンタジーの世界なのに精密です。風景や動植物、食べ物や衣装、習慣や掟などが、丁寧に描かれていて話に厚みがあるから大好きです。
さて、これもアニメになったのでご存じの人も多いと思いますが、『獣の奏者』の物語の中で主人公エリンが、育ての親ジョウンのもとを離れ、王獣を飼育するカザルムの学舎に入るために試験を受けるという場面があります。
なぜ、獣の医師になりたいか書きなさい。
エリンはこう答えます。
「この世に生きるものが、なぜ、このように在るかを、知りたいのです」「生き物であれ、命なきものであれ、この世に在るものが、なぜ、そのようにあるのか、自分は不思議でならない。小さな蜜蜂たちの営みが、信じられぬほど効率がよいこと、同じ蜂でも多種多様であること、なぜ、それらが、そうであるかを考えると、果てしない問いが浮かんでくる。自分も含め、生き物は、なぜ、このように在るのか知りたい。」
(上橋菜穂子著『獣の奏者Ⅰ闘蛇編』より)

私は、この言葉の中に、上橋さんの考える学びの本質が在ると思います。
大学に入ることは大切ですが、何を学びたいのですか?
私は、様々な物質が、構造式が一つ変わるだけで、形や色までもかわってしまうのが不思議で、化学・ケミストリーの道を選びました。
皆さんにとって、自分が不思議と思うものは何ですが?
春休みは、1年生でも2年生でもない、2年生でも3年生でも少し宙ぶらりんな時期です。だから、自由にものが考えられる時期でもあると思います。

ぜひ、なぜ学びたいのか、何が学びたいのか?
考える春休みにして下さい。