連綿と繋がるバトン-生徒作品集「あしたづ」 第31号発刊

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 同窓会あしかび会ホームページで既に紹介されていますが、芦高生の作品集「あしたづ第31号」が発刊されました。図書課長から毎年巻頭言をと依頼されるのですが、芦高生の立派な作品を前にして、なかなか筆が進まないのが常でした。この生徒作品集「あしたづ」は、芦高の伝統に裏打ちされた連綿と繋がるバトンなのです。巻頭言を掲載することにより「あしたづ」の紹介とします。

生徒作品集「あしたづ 31号」が発刊されることに敬意を表するとともに、30年以上も芦高の歴史を彩ってきた「あしたづ」の巻頭を3度も飾ることのできる幸運な巡り合わせに感謝の意を表します。また、芦高生たちが主役で活躍した様々なドラマや舞台の集大成と言っても過言ではないこの「あしたづ」を自信と誇りを持って発刊できる喜びを感じています。

ご存知のように、昭和59年に創刊されたこの「あしたづ」は、芸術科作品から感想文、研究レポート等に至る様々な教科・分野での学業成果を一括して収めた作品集としてこれまで一定の評価を得てきました。今号でも芦高生たちの豊かな感性に裏打ちされた見事な作品が多数収録されています。この「あしたづ」をご覧になる皆さんは、きっと作品の完成度に大いに目を奪われ魅せられることと思います。                                               

 私は本校着任以来、学校経営のテーマを「ドラマティック(Dramatic)・ドラスティック(Drastic)芦高~魅力ある芦高・芦高生の創造~」と掲げ、先生方には芦高生たちが様々な舞台でドラマティックに主役を演じることのできる舞台づくりをお願いしてきました。また、「文武両道」をスローガンとして、芦高生の発信力や論理的思考力を育んできました。このような芦高生の個性や感性、能力を伸長する試みのなかで、久しく休眠状態であったボランティア部、書道部、ESS部が見事に蘇るとともに、活動の幅を一層広げ、各方面において高い評価を得ています。それらの活動の一端が本誌にも収録されています。例えば、今年の夏、1年間の学習と準備を経て、ボランティア部と書道部のコラボで、東日本大震災復興ボランティアに出かけ、仮設住宅で暮らす被災者の皆さんや、宮城県立多賀城高等学校生徒会とも心の通った交流を図ることができました。そしてその活動の成果が高く評価され、ボランティア部は全国4,400のランティア団体の中から40団体のひとつに選考され「プルデンシャル・ボランティア・スピリット賞」を受賞したのは特筆すべきことです。

時は今、加速度を増しながら押し寄せるIT革命の波に晒されています。その一方では、高校生のプレゼンテーション能力の養成が優先課題となり、通信機器の急速な進化に起因するコミュニケーション能力の欠如が声高に叫ばれています。そして人間の基本的なコミュニケーションの手法である heart to heart、face to face といったコミュニケーションの手法の重要性が再認識されています。そのような状況の中、図書課を主担として取り組んできたこの「あしたづ」プロジェクトが、そんな喫緊の課題を容易く解決する糸口になるのではないかと自負しています。芦高生の皆さん、TwitterやLine等で無意味に投稿したり呟いたりするよりも、この「あしたづ」で自己表現に挑戦しましょう。最後になりましたが、「あしたづ」の編集に携わった図書課の先生方、そして誰よりもこのプロジェクトに参画してくれた芦高生たちに感謝し、芦高の歴史とともに未来永劫「あしたづ」が発刊され、これからも連綿とバトンが繋がることを祈念して巻頭言とします。

校長 八木 基雄

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「日本の文化」 小笠原雛を折る

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「日本の文化」の授業は、毎年「小笠原雛」作りで締めくくられます。「小笠原雛」は武家礼法家元小笠原家に伝わるもので、折紙による雛人形としては最古といわれています。江戸時代には将軍家のみにゆるされた「御留流」でした。授業では小笠原流礼法をたよりにこれまで「立つ」「座る」「歩く」「礼」「結ぶ」などを学んできましたが、最後は「折る」を取り上げました。また雛祭りを素材に、伝統的な年中行事で大切な五節句についても学びました。

年次末考査にかえて、以下のレポートを作成し、一年の講座を終えました。

レポート課題:「日本の文化」の特質について、「礼の文化」「座の文化」「型の文化」「見立の文化」という視点の一つもしくは複数を用いて、具体的に述べなさい。

文責:「日本の文化」担当者

70期生全員で紡いだ絆に乾杯!

早いもので、3月弥生に突入しました。そこかしこに新しい命の躍動が感じられます。学区拡大に伴う初めての複数志願選抜で、私たちも最後の詰めを慎重に行っているところです。芦高を志願している受検生の皆さん、当日は安心して受検してもらえるように、万全の体制を整えます。皆さんには、中学校の卒業式が来週に迫っています。最後の最後までベストを尽くして、自信をもって受検に臨んでください。

さて、2月27日、まるで70期生の新たな門出を祝福するかのように雨もあがり、多数のご来賓各位並びに保護者の皆様にご臨席を賜り、厳粛にそして温かく卒業証書を314名に授与しました。名門芦高で卒業証書を3度授与することのできた運命の巡り合わせに感謝するばかりです。

心のこもった自治会副会長の足立さんの送辞では、これまで自治会執行部でお世話になった頼もしい、憧れの先輩を送り出すという喜びと寂しさが素直に伝わってきました。前自治会長の上田 楓さんの答辞には、3年間の大好きだった芦高への熱い思いと、後輩たちへ、お父さんやお母さん、支えてくださった家族や先生方への温かいメッセージがたくさん込められていました。時折、感涙で答辞を読めなくなる場面もありましたが、最後まで立派に読み終えることができました。ステージ上で上田さんの答辞を聞いていて、私も涙があふれてきました。(実は、私は式辞の時から感極まっていたのです・・・)式場でも多くの保護者の皆様や教職員が彼女の感動の答辞に涙しました。

彼女が答辞で、後輩たちに問いかけた「私たちは頼れる先輩だったでしょうか。私たちは私たちが憧れた先輩のようになれていたか少し不安です」の答えは、この温かい卒業式にありました。皆さんは立派に後輩たちの憧れの存在となり、理想の「芦高生」像になりましたよ。

芦高大好き70期生の洋々たる前途に、そして70期生全員で紡いだ最強の絆に乾杯!

この写真は卒業後のホームルームでの最後の集合写真です。この写真ではあまりわかりませんが、みんないい顔して写っています。私の卒業記念にと、卒業生の一人が私にプレゼントしてくれた写真です。ありがとうございました。70期生と共に過ごした3年間は私の一生の宝物になりました。

皆さんへの熱い思いを込めた式辞を掲載しておきます。

 

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 翠ヶ丘の梅がかぐわしく薫り、芦屋川の桜がその蕾を膨らませ、新たな生命とエネルギーを生み出す春の躍動が、随所に感じられるようになりました。本日、このような佳き日に、兵庫県立芦屋高等学校第67回卒業証書授与式を挙行するにあたり、多数のご来賓各位並びに保護者の皆様にご臨席を賜りましたことは、私たち教職員の大きな喜びとするところであります。高いところからではありますが、厚くお礼申し上げます。

 芦高70期生の皆さん、卒業おめでとうございます。そして、限りなく深い愛情でお子様を育まれ、支えて来られた保護者の皆様、お子様のご卒業、誠におめでとうございます。心よりお祝いを申し上げます。晴れて巣立ちの日を迎えた314名の皆さんは、今どのような感慨に浸っているのでしょうか。そしてまた、この創立74年の伝統と創造の学舎で、誇り高く「芦高生」と呼ばれ続けた3年間は、これからの皆さんの人生の中でどのような位置を占めることになるのでしょうか。

70期生の皆さんは、「自治・自由・創造」の教育綱領の下、「文武両道」を目標に掲げ、芦高の活気あふれるエネルギーの源流として、学習はもとより自治会活動や部活動に一生懸命取り組み、古き良き伝統の継承者として、立派にその役割を果たしてきました。本日、私たちは自信をもって、皆さんを有為な人材として新たな社会に送り出すことになります。本校は普通科単位制としては県下でも後発校ですが、多様な生徒の多様なニーズに対応する特色ある教育課程や伝統の自治会活動、そして丁寧なガイダンスとキャリア教育等の学校力が高く評価され、今や県下高等学校を先導するまでに至りました。そんな環境の下で、芦高の新たな歴史を彩るとともに、自己実現のために努力を惜しまなかった70期生の皆さんに敬意を表します。また、3年間にわたり無遅刻無欠席をとおして「皆勤賞」を受賞した20名の皆さん、「文武両道」を果たして「芦高精励賞」を授与された215名の皆さんに心から賛辞を送ります。縁があり、芦高という素晴らしい学校で、皆さんに巡り会った校長として、これほど嬉しく、誇らしいことはありません。

 さて、皆さんと忘れ得ぬ時間と思い出を共有した3年間を少し振り返ってみることにしましょう。期待と不安に胸を膨らませ、宮川の満開の桜の花に迎えられての入学式、芦高生としての生活の基本や気質を優しく時には厳しく、徹底的に伝授してくれた指導委員の頼もしい先輩たち、伝統の県立西宮高等学校との定期戦で声高らかに謳った「定期戦の歌」、母校愛に燃え、声を限りに応援した仲間たち、対戦成績2敗で迎えた昨年の定期戦は両校優勝の結果で終わり、とても悔しい思いをしました。そして、凛とした第66代上田 楓自治会長の見事な自治の下、時には熱い議論を交わしながら燃えに燃えた記念祭や体育祭、青い空と珊瑚礁の海、夜空にきらめく満天の星を眺めながら、平和や人と人の絆のすばらしさをあらためて感じた美ら海への修学旅行、遅くまで延々と続いた年次レクレーションはなかなか見応えがありました。そして、部活動の集大成、引退試合で溢れ出てきた熱い涙、これらはみな太陽がくれた「青春」という季節に、「芦高生」として謳歌したかけがえのない光り輝く日々であり、この3年間を真摯に生きてきた証でもあります。私にとってもこの3年間の日々は教員生活において 何物にも替えがたい大切な宝物になり、皆さんは後輩たちには憧れの存在となり、理想の「芦高生」像になりました。このように、皆さんは、3年前には真っ白だったキャンバスにそれぞれが思い思いに絵を描き、ついに最高傑作を見事に完成させたのです。そんな皆さんの個性豊かな色彩に彩られたキャンバスの片隅に、ほんの少しでも私たち教員の存在が描かれているならこの上なく幸せに思います。

 人は出会いと別れを繰り返しながら成長していきます。いよいよ皆さんとのお別れの時が近づきました。そこで、昨年好評を博したNHK朝の連続テレビドラマ「花子とアン」の名シーンから、女学校の卒業式でのブラック・バーン校長の式辞を餞のことばとして送ります。この式辞は東洋英和女学院の第十代校長ミス・ブラックモアが実際に卒業生に送ったメッセージです。

 “If some decades later, you look back on your time with us here and you feel that these were the happiest days of your life, then I must say your education will have been a failure. Life must improve as it takes its course. Your youth you spend in preparation because the best things are never in the past, but in the future. I hope that you pursue life, and hold onto your hope and your dream until the very end of the journey.”

 今から15年、20年、30年の後に、皆さんが今日のこの時代を思い返して、なおかつ、芦高時代が一番楽しかった、一番幸福だった、と心底から思うようなことが、もしあるとしたならば、私はそれを芦高での教育の失敗だといわなければなりません。人生は進歩です。今日は昨日よりも良く、明日は今日よりも優れた生活へと、たえず前進していくのが真実の生き方です。若い時代は準備のときであり、その準備の種類によって次の中年時代、老年時代が作られていきます。最上のものは過去にあるのではなく、将来にあります。旅路の果てまで希望と理想を持ち続けて進んで行く者であってください。

最後になりましたが、保護者の皆様、大きく成長されたお子様の姿をご覧になるにつけ、感慨ひとしおのことと拝察いたします。この3年間、本校に賜りましたご理解ご支援に対しまして、厚くお礼申し上げます。在学中は至らぬ事も多々あったとは存じますが、今日の佳き日に免じてご容赦くださいますようお願い申し上げます。

 70期生の皆さんいよいよお別れの時です。この3年間、笑ったり、喜んだり、悲しんだり、怒ったり、悔しかったり、また時には大声で叫びたくなったり、皆さんの喜怒哀楽を共に乗り越えてきた70期生の紡いだ絆は最強です。卒業後は、日本国内はもとより世界各国で活躍している28,000人の同窓会あしかび会員の皆さんがきっと支えになってくださいます。そんな諸先輩の大きな背中を目標に、芦高で培った「人間力」を武器にして、涯なき明日へ飛翔してください。私たち教職員は今後も皆さんへの支援を惜しむことはありません。必要な時にはいつでも母校に帰ってきて、芦高時代を懐かしみ、羽根を休めてください。しかし忘れてはいけないのは、最上のものは決して過去にあるのではないということです。

平和と愛と純情の眉うら若き若人が、遠きイデアを育んだ理想の精舎、皆さんの母校「芦高」はいつでも皆さんが帰ってくるのを待っています。私たち教職員もまた「芦高」の古き良き伝統を維持しながら、芦高生の心の居場所である学校づくりに一層邁進することを誓います。それでは、皆さんの心の故郷である「芦高」でまたお会いすることにいたしましょう。

 70期生の皆さんの今後の活躍を期待するとともに、その前途に幸多かれと祈り、式辞といたします。

 

平成27年2月27日

         兵庫県立芦屋高等学校 第25代 校長 八木 基雄

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