44回生卒業式 学校長式辞

暖冬と言われるこの冬に、新コロナウィルスによる肺炎という病が世間を騒がせ、様々な心配も寄せられる中、ここ多可高等学校では、教職員、生徒を始め、ここにご参列いただいた皆様の体調管理への信頼の下、第44回卒業証書授与式を挙行いたすこととなりました。

今日の佳き日に、多数のご来賓並びに保護者の皆様方のご臨席を賜り、令和元年度兵庫県立多可高等学校第44回卒業証書授与式を挙行できますことにつきまして、皆様方には、心より厚く感謝申しあげます。

ただいま卒業証書を授与いたしました百八名の卒業生の皆さん、卒業おめでとうございます。皆さんは、令和の元号で卒業する最初の卒業生です。人としての資質の向上を求められるこの変化の時代に皆さんは巣立っていかれます。私は、44回生の皆さんが2年生になったとき、多可高校に参りました。転勤してきたばかりの私に、皆さんは、心良く挨拶をしてくれました。それは、地域の方々からもお褒めの言葉をいただきました。私は、今年度も個別に3年生全員、面談をさせてもらいました。進路のことを中心に、皆さん自身のことを感じることができるように面談をしました。みんな自分の将来について考え、迷いながらも自らの進むべき道をしっかり見つめていました。誰もが本気でした。短い時間の中で皆さんは辛かった時間、楽しかった時間を振り返り、笑い、ときには涙を流しながらも校長室で面談の時間を過ごしてくれました。妙見祭や体育大会、修学旅行、マラソン大会など、行事の度に感動させられたのは、その本気の度合いです。みんなそれぞれに本気の出し方というのは違っているけれども、皆さんの行動から、本気の強さが伝わってきました。高校生議会での提案、具体的には、多可町外から通う生徒たちのバス定期代補助や黒田庄から多可高校までのバスの運行を決めていただいたのは、皆さんの本気の思いの強さが聞いていただいた方々に伝わったからだと思います。私自身にとっては、皆さんとの日々の関わりも心に残ります。校長とは、生徒からは一番遠い教員と言われています。その遠いところからよく挨拶をし、声をかけてくださった皆さんに感謝します。ありがとうございました。

さて、これから次のステップへと旅立つ卒業生の皆さんの輝かしい門出に当たり、思うところ、願うところを3つお話し、餞の言葉といたします。1つ目は、「自他共にかけがえのない命を大切にし、学び続けてほしい」ということです。自分自身と他者の命を大切にし、他者を大事に思いやれる人となってほしいことは繰り返しお話ししてきました。皆さんの平均寿命は107歳と言われています。これからその年齢まで誰もが健康で生き生きとした人生を送るために、魂を傷つけるようなことばで相手を傷つけるのではなく、互いの思いやりが自然にできる社会にしていかなければなりません。そんな社会を皆さんが築くためにも、学びの姿勢を持ち続けてください。2つ目は、「本気で好きなことを見つけ、続けてできることを増やしてほしい」ということです。何ごとにも本気であってほしいということを言い続けて参りました。何ごとにも本気で向かい合うことは、皆さんの人生対する姿勢となります。好きなことを見つけることも続けることも本気でなければできません。「何ごとでも1万時間の学習をすれば、誰でも超一流になれる」と説いたのは、アップルの創業者、スティーブン・ジョブスです。1日3時間として10年間続けるということです。10年、何かを続けることができれば、何でもできるということです。それが仕事であれ、趣味であれ、続けることができる好きなことを見つけていくことは、皆さんが生きていくSociety5.0 の社会で、AIなどには決して負けない、人としてできるものを磨き続けることでもあります。ほんの少しでもこの「好き」という気持ちを持つことや、小さなことでも続けることができるものを増やしてください。最後の3つ目は「感謝する心を忘れず、しあわせな人生を創ってほしい」ということです。「感謝」の気持ちは、多可高校で育んできた「福祉のこころ」です。「感謝のこころ」は幸せを創り上げていきます。今、まず何より皆さんが感謝すべき存在であるのは、皆さんの保護者、家族、「おとうさん」「おかあさん」でしょう。日本という国は、お日様の「日」と本気の「本」で「日本」と漢字で書きます。意味は、太陽を生きる源としている国ということです。太陽に生かされていることを自覚し、太陽に感謝し、そこから文化も創り上げてきました。そして、同じく太陽のように自分たちを生み出してくれ、命を与えてくれた存在、つまり、母親のことを、お日様の「日」と身長の「身」と書いて「おかみさん」と呼んでいました。「日身(かみ)」は、太陽のように命の源となる存在という意味です。「おかみさん」から「おかかさん」になり、「おかあさん」と呼ぶようになりました。自分自身に命を授けてくれ、育ててくれた人に感謝を込めて「おかあさん」と呼んだのです。おとうさんは尊い人という意味から、「おとうとさん」「おととさん」となり、「おとうさん」という言葉が生まれてきました。皆さんの横やうしろには、今、命を授けてくれた、尊い、そのお母さん、お父さん方が並び、皆さんの背中を見つめています。命をかけて皆さんを産み、一晩中泣きやまぬ赤ちゃんである皆さんをあやしたのも、高熱を出した皆さんを病院へ連れて駆け込んだのも、そして、小学校、中学校と階段をかけ上がる日々をずっと見つめてきたのも、多可高校への送り迎えをしてきたのも、おとうさん、おかあさんです。また、地域の方々も、皆さんの日々の成長を見守っていただいた、地域の「おかあさん」「おとうさん」です。家では、今日は、「おとうさん、おかあさん、ありがとうございました」と言ってください。そして「おかあさん」「おとうさん」は「おめでとう」と答えて、ぎゅっと抱きしめてあげてください。

今日は、3年生を担当されてきた先生方も、皆さんを特別な思いで見つめていらっしゃいます。卒業生の皆さんを「元気で明るく笑顔が印象的」だという先生が、「思い出は宝物、自分の周りの人を大切に」と皆さんに語りかけています。自分自身の門出を祝う曲にロードオブメジャーの「大切なもの」をあげる先生が、「健康第一。いつまでもお元気で」と皆さんに伝えています。そして、「新たな道を切り拓いていってください。応援しています」と人なつっこい皆さんを激励する先生もいます。福山雅治さんの「道標」を愛する先生が、皆さんを見つめて「大きくなったね」と思い、「それぞれの場所で活躍してください」とエールを送っています。先生がたは間違いなく皆さんの応援団であり、味方であったと思います。先生がたは間違いなく、皆さんのことが大好きで、味方でした。そして、これからも皆さんの味方であり続けるのだろうと思います。

さて、時の流れとともに、式辞も結びの時がまいりました。卒業生の皆さん、どうぞ命を大切にし、本気と感謝の心を忘れず、しあわせな人生を歩んでください。多可高校で学んだ福祉のこころをこれからも求めていってください。繰り返しとなりますが、本日ご臨席いただきましたご来賓の方々並びに保護者の皆様、地域の皆様方の本校に対するこれまでのご理解とご支援に対しまして厚くお礼申しあげますとともに、卒業生の皆さんの栄えある前途を祝福して式辞といたします。本日はありがとうございました。そして、おめでとうございます。
令和2年2月27日

兵庫県立多可高等学校 校長 大矢 徹