「西高 校長室の窓から №.57(2017.3.2)」
2月には推薦入試があり、瞬く間に過ぎてしまいました。この「校長室の窓から」の更新も約1ヶ月振りになります。
弥生、3月1日、寒さの中にも温かさが感じられるようになりました。1、2年生の学年末考査も無事に終了し、学校全体が落ち着いた環境の下で、西高38回生の卒業式が挙行されました。
見慣れた38回生たちが、久しぶりに、賑やかにそして元気に登校してきました。西高では、厳粛の中にも温かさのある卒業式が伝統です。この日のために、時間を惜しむことなく、様々な準備を整えてくれた在校生の皆さんや先生方のおかげで、本当に感動的な卒業式を終えることができました。この3月に定年退職を迎える私にとっては、最後となる37回目の卒業式でした。きっと私の教員生活のレガシーとして、生涯忘れることのできない卒業式となると思います。
私は万感の思いを込めて、次のような式辞を卒業生に送りました。
梅の花が、かぐわしく薫り、桜が、その蕾を膨らませ、新たな生命とエネルギーを生み出す春の躍動が、随所に感じられるようになりました。
本日、この佳き日に、兵庫県立宝塚西高等学校第三十八回卒業証書授与式を挙行するにあたり、多数のご来賓各位、並びに保護者の皆様にご臨席を賜りましたことは、私たち教職員の大きな喜びとするところであります。高いところからではありますが、厚くお礼申し上げます。
「文武両道」を目標に掲げ、西高を活気づけた三十八回生
西高三十八回生の皆さん、卒業おめでとうございます。そして、限りなく深い愛情でお子様を育まれ、支えて来られた保護者の皆様、お子様のご卒業、誠におめでとうございます。心よりお祝いを申し上げます。
晴れて巣立ちの日を迎えた二七二名の皆さんは、今どのような感慨に浸っているのでしょうか。そしてまた、この創立四十年の歴史と伝統の学舎で、誇り高く、「西高生」と呼ばれ続けた三年間は、これからの皆さんの人生で、どのような位置を占めることになるのでしょうか。
三十八回生の皆さんは、「自立・自律・捨身」の校訓の下、「文武両道」を目標に掲げ、西高の活気あふれるエネルギーの源流として、学習はもとより、生徒会活動や部活動に、一生懸命取り組み、西高の良き伝統の継承者として、立派にその役割を果たしてきました。
本日、私たちは、自信をもって、皆さんを有為な人材として、新たな社会に送り出すことになります。本校は、宝塚市内三番目の全日制普通科の県立高等学校として創立され、昨年の十一月には皆さんとともに、創立四十周年の節目の年を迎えることができました。草創期より、県下の国際教育推進の先駆者として、その名を馳せ、多様な生徒の多様なニーズに対応する、特色ある教育課程や丁寧な進路ガイダンス、そしてキャリア教育等の「学校力」が高く評価され、今や県下高等学校を先導するまでに至りました。
そんな環境の下で、西高の新たな歴史を彩るとともに、自己実現のために努力を惜しまなかった、三十八回生の皆さんに敬意を表します。そしてまた、三年間にわたり無遅刻無欠席を通して「皆勤賞」を、これから授与する二十三名の皆さんの真摯な努力を讃えるとともに、心から賛辞を送ります。縁があり、西高という素晴らしい学校で、皆さんに巡り会った校長として、これほど嬉しく、誇らしいことはありません。
理想の「西高生」像を確立した三十八回生
さて、皆さんと忘れ得ぬ思い出と時間を共有した出来事を、少し振り返ってみることにしましょう。
期待と不安に胸を膨らませ、満開の桜の花に迎えられての入学式、西高生としての生活の基本や気質を、優しく、時には厳しく教わった学習合宿、そして、第三十八代草郷会長の見事な自治の下、時には熱い議論を交わしながら、燃えに燃えた西高祭や体育祭、青い空と珊瑚礁の海、夜空にきらめく満天の星を眺めながら、平和や人と人との絆のすばらしさをあらためて感じたグアム島への修学・研修旅行。チーム三十八回生の団結力と盛り上がった全体レクレーションは、なかなか見応えがありました。
そして、部活動の集大成、引退試合で溢れ出てきた熱い涙、これらはみな、太陽がくれた「青春」という季節を、「西高生」として謳歌した、かけがえのない光り輝く日々であり、この三年間を、真摯に生きてきた、「証」でもあります。私にとっても、皆さんとのこの二年間の楽しい日々は、私の三十七年間の教員生活の中で 何物にも替えがたい大切な宝物になり、皆さんは、後輩たちにとっては、憧れの存在となり、そして理想の「西高生」像となりました。
このように、皆さんは、三年前には真っ白だったキャンバスに、それぞれが思い思いに絵を描き、ついに、本日、最高傑作を見事に完成させました。そんな皆さんの個性豊かな色彩に彩られたキャンバスの片隅に、ほんの少しでも、私たちの存在が描かれているなら、この上なく幸せに思います。
人生において最上のものは過去にあるのではない!
人は出会いと別れを繰り返しながら成長していきます。いよいよ皆さんとのお別れの時が近づきました。そこで、数年前に好評を博したNHK朝の連続テレビドラマ「花子とアン」の名シーンから、女学校の卒業式での、ブラック・バーン校長の式辞を餞のことばとして送ります。この式辞は東洋英和女学院の第十代校長ミス・ブラックモアが実際に卒業生に送ったメッセージです。
“If some decades later, you look back on your time with us here and you feel that these were the happiest days of your life, then I must say your education will have been a failure. Life must improve as it takes its course.Your youth you spend in preparation because the best things are never in the past, but in the future. I hope that you pursue life, and hold onto your hope and your dream until the very end of the journey”
今から十五年、二十年、三十年の後に、皆さんが今日のこの時代を思い返して、なおかつ、西高時代が一番楽しかった、一番幸福だった、と心底から思うようなことが、もしあるとしたならば、私はそれを西高での教育の失敗だといわなければなりません。人生は進歩です。今日は昨日よりも良く、明日は今日よりも優れた生活へと、たえず前進していくのが真実の生き方です。若い時代は準備のときであり、その準備の種類によって次の中年時代、老年時代が創られていきます。「最上のものは過去にあるのではなく、将来にあります」。旅路の果てまで希望と理想を持ち続けて進んで行ってください。
西高で培った「人間力」武器に、涯なき明日へ飛翔せん!
最後になりましたが、保護者の皆様、大きく成長されたお子様の姿をご覧になるにつけ、感慨ひとしおのことと拝察いたします。この三年間、本校に賜りましたご理解とご支援に、厚くお礼申し上げます。在学中は至らぬ事も多々あったと存じますが、今日の佳き日に免じて、ご容赦くださいますよう、重ねてお願い申し上げます。
三十八回生の皆さん、いよいよお別れの時です。この三年間、笑ったり、喜んだり、悲しんだり、怒ったり、悔しかったり、また時には、大声で叫びたくなったり、皆さんの喜怒哀楽を共に乗り越えてきた三十八回生の紡いだ絆は最強です。卒業後は、日本国内はもとより世界各国で活躍している一万一千人を超える同窓生の皆さんが、きっと支えになってくださいます。そんな諸先輩方の大きな背中を目標に、西高で培った「人間力」を武器にして、涯なき明日へと飛翔してください。私たちは、今後も皆さんへの支援を惜しむことはありません。必要な時にはいつでも母校に帰ってきて、西高時代を懐かしみ、羽根を休めてください。しかし忘れてはいけないのは、「最上のものは決して過去にあるのではない」ということです。
この三年間、チーム三十八回生として、遠きイデアを育んだ理想の精舎、皆さんの母校「宝塚西高」はいつでも皆さんが帰ってくるのを待っています。私たちもまた「西高」の良き伝統を維持しながら、西高生の心の居場所である学校づくりに一層邁進することを誓います。それでは、皆さんの「心の故郷」である「西高」でまたお会いすることにいたしましょう。
三十八回生の皆さんの今後の活躍を期待するとともに、その前途に幸多かれと祈り、式辞といたします。
38回生の前途に幸多かれと祈りつつ校長室にて
校長 八木 基雄