校長のつれづれブログ

教育実習まっただ中

 教育実習が始まり、2週目に入った。実習生の中には今週で期間を終了する先生もいて、なんとなくさみしい気持ちになる。

 私は教育実習生を担当するとき、自分の実習ノートを貸し出すことにしていた。当然ボロボロで、貼り付けたプリントの周囲は茶色く変色している。それでも、あえて、半ば強引に貸し出すようにしていた。そこには、指導教官の思いが山のように詰まっているからだ。

 私は自分の出身高校が大嫌いだったので、中学校で教育実習を行った。担当教官は女性のベテラン教諭。とにかく厳しかった。初日のガイダンスこそ授業はしなかったが、翌日からすべての授業を私が担当することになった。当たり前だがうまく授業が進まない。中学生相手なので、難しい言葉を使うと訂正され、漢字の書き順を間違うとその都度指摘された。授業後は毎回教官から叱られる、そんな日々が続いた。昼食は教室でとるように言われ、生徒たちから奇異な目で見つめられながら、なぜか教室の真ん中にぽつんと置かれた私専用の席で食べた。放課後はノート点検と小テストの採点。それが終わると、ちょうど壁新聞コンテストのまっただ中であったので、その指導にあたる。家に帰れば翌日の教材研究と指導案の作成。気の休まる暇さえなかった。

 扱った教材は安岡章太郎の「サーカスの馬」。劣等感にさいなまれている主人公が、サーカス小屋につながれていた痩せた老馬に同情を寄せていたが、いざサーカスが始まるとその馬は花形で、老馬の勇姿に感動し、思わず拍手を送る、そんな話だった。研究授業は時間がなくてクライマックスまでいけなかったが、見に来てくださった先生方から「板書が見やすくてよかった」「授業内容もよく練られていた」と褒めていただいた。

 クラスで弁当を食べたこと、ノート点検や小テストの採点、放課後の壁新聞、授業後の厳しい指導。そのすべてがこの授業につながっていることを、そのとき知った。

 指導教官は「普段発言しない生徒も手を上げていた。クラスみんなが先生の研究授業を応援していた」と教えてくださった。

 劣等生だった私自身が拍手をもらったような、そんな気持ちだった。

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