6月13日の満月は特別なものだった。
夏至に近い時期の満月は、太陽が一番高いところを通るのに対し月は低い位置を通過するため、月の色に赤みがかかりハニー・ムーンと呼ばれるということだ。そのうえ今回の月は、その軌道の中でも地球に最も近いところを通るので、満月はいつもより不気味に大きく感じられた。
この月はイスラム教を信じる人々にとってはカウントダウンの月になっている。イスラム暦で年に一度巡ってくる断食月の始まりにつながる月になるのだ。
イスラム暦は太陽(太陽暦)ではなく月の満ち干を見て時を刻む太陰暦のため、私たちが使っている365日のカレンダーとは違う時が流れている。月の動きが時間をコントロールしているのだ。
そのイスラム暦の9番目の月は毎年「断食の月」となる。
断食の月は、日の出から日の入りまでの間、食べたり飲んだりしてはいけない。敬虔なモスリム(イスラム教徒)は、この断食を毎年9月のひと月の間、繰り返しおこなっている。
いま、6月13日の満月が少しずつ欠けていっている。カレンダーの上では20日に半月となり、27日には全て消えることになっている。そして翌日の28日、爪の様な薄い光を放つ月が夜空に浮かぶことになる。
イスラム教ではこれを新しい月(新月)といい、権威ある人物が肉眼で確認して「見えた」、と宣言すると正式に断食始まりの日となる。逆に言うと、降雨や嵐のため肉眼で確認できなければ、始まりが一日ずれるということも起こりうる。科学の時代といわれながらも、肉眼での目視が必要条件になっているのだ。
西暦2014年の6月28日はイスラム暦1435年の9月1日。
世界中のイスラム教徒が一斉に断食を始める日になるはずだ。