第一回入学式 式辞
六甲の山脈青く、新生の息吹漲る今日の佳き日、この地に兵庫県立西宮苦楽園高等学校を開校し、ご来賓の方々及び保護者の皆様のご臨席のもと、兵庫県立西宮苦楽園高等学校第一回入学式を斯くも盛大に挙行できますことはこの上ない喜びであります。ただいま入学を許可した280名の新入生の皆さん、誠におめでとうございます。教職員一同、そして西宮北高校の在校生を代表し、心からの祝意と歓迎の意を表します。さて、本校の開校に向けては、兵庫県教育委員会のご指導のもと、西宮北高等学校および西宮甲山高等学校の関係者が一丸となり、3年の歳月をかけて準備を進めてまいりました。どのような魅力と特色に溢れた高校にするのか?校名は?制服はどうするのか?そうした一つ一つのことを、発展的統合校開設準備委員会が中心となり、両校の先輩たち、学校評議員の方々、地域の皆様のご意見も参考にしながら進めてきました。多くの方々の思いや価値観、期待にあふれた高校、そして18年ぶりに兵庫県に開校する全日制普通科高校、これが、皆さんの入学する西宮苦楽園高等学校です。本校では、「理想を求め 敬愛を深め 真実を極める」という校訓と、「グローバルな課題に果敢に挑戦しようとする勇気、対話力、創造性を備え自己の幸福を追求しつつ社会に貢献できる人材を育成する」という学校の使命を高らかに掲げています。文理探究科では、情報テクノロジーを駆使して「Think globally Act locally」(グローバルな視野で、地域社会に貢献する)をテーマに、総合的な探究の時間などで、7単位の探究学習を進めるほか、システムのプログラミングやアプリ開発、ドローンの操作、AR・VR開発など最先端の知識と技能を体系的に学ぶことができる環境を整えます。そして、こうした文理探究科の学びを普通科にも広げ、学校全体のDX化を進めることで、新たな時代に必要とされる力を育成してまいります。DXとは、デジタルトランスフォーメーションの略で、情報テクノロジーを使って人生をよりよくすることを意味しますが、学校だけでなく、地域の皆様と共に歩む学校の使命として、新しくDX部を部活動として新設いたしました。産声をあげたばかりの西宮苦楽園高校です。100年先も人々が集い、学び、成長し、愛される高校であり続けるためには、教職員だけではなく、生徒、保護者、地域、同窓会など多くの方々が当事者としての意識を持って、関わり、力を尽くしていくことが何よりも大切です。
皆さんは今、この西宮苦楽園高校第一回生として、新たな歴史の一歩を踏み出しました。この記念すべき門出に、私の思うところの一端を述べて歓迎、激励いたします。先ほど述べましたスクールミッションには三つの力が示されていますが、これは私が苦楽園高校生に特に身につけてほしいものとして、明文化したものです。一つ目は、『勇気』です。皆さんには、この3年間で、学習、探究活動、生徒会、部活動、趣味、なんでもかまいません。自分が没頭できること、興味関心のあることに高い目標を掲げ、ぜひ挑戦し続けてほしいと願います。「挑戦」ということはよく使われる言葉ですが、何かに挑戦しようとするとき、常識を盾に取られたり、他者の価値観を押し付けられたりして、反対されることも多いでしょう。挑戦には必ず困難が伴います。周囲からの批判や懐疑的な意見にさらされても「勇気」をもって一歩踏み出し、これまでの自分の殻を破ってくれることを期待します。二つ目は『対話力』です。皆さんがこれから歩む社会は、多様な価値観が共存し、異なる意見が交錯する世界です。そうした社会では、他者をリスペクトする姿勢とともに、しっかりとした自分の意見や価値観を持つことが求められます。まずは日々の学習、基礎的な知識や技術を学ぶ教科学習を大切にしてください。基礎基本的な学習の過程で、多様な他者との対話を通して自分になかった価値観に気づき、学んでいくことが、新たな可能性を拓く契機となるでしょう。三つ目は、『創造性』です。今、世界は、AIなどの急速な技術革新、地球温暖化、国際紛争など生活に直結した課題で溢れています。次世代を担う皆さんには、既存の枠組みや常識にとらわれず、自分の頭で考え、柔軟な発想と独創的なアイデアで新しい価値を創造できる人になってほしいと願います。挑戦する勇気をもつこと、対話する力を鍛えること、創造性を発揮すること、本校のスクールミッションにあるこの三つのことを念頭に置き、本校での学業に専念してください。
西宮苦楽園高校は、「すべての人が互いの人権を尊重し、安心して学び合える学校」を目指します。自分がされて嫌なことは決して人にはしない。こうした高校生として当たり前のことを今一度意識し、実践してください。それが一人ひとりの学校生活を保障し、持てる力を最大限発揮できる機会につながります。最後になりましたが、保護者の皆さまに申し上げます。お子様もあと2年もすれば自分の言動に大人としての責任が生じる成年年齢に達します。高校では時には、一見突き放した指導、厳しい指導をしていると感じることがあるかもしれませんが、成長を願う気持ちは私たちも同じです。この3年間、生徒たちの成長を共に支えるパートナーとして本校の教育活動にご理解とご支援を賜りますようお願い申し上げます。第一回生である皆さんが、この3年間で西宮苦楽園高校の礎を立派に築き、そして自らの輝かしい未来を切り開いてくれることを祈念して、第一回入学式式辞といたします。
令和七年四月八日
兵庫県立西宮苦楽園高等学校長 宮本 美枝子