全国高等学校長会への旅

 前日の5月27日から埼玉入りし、大宮ソニックシティホールで2日間に及び開催された全国高等学校長会総会・研究協議会に参加しました。各地区の学校経営実践研究協議や教育領域のトレンドについての文部科学省による説明、京都大学 山極壽一元総長による基調講演「学びの本質と高校教育」など、示唆に富む大変充実した研修の機会となりました。山極先生は、類人猿(ゴリラ)研究の第一人者ですが、この類人猿から人間がどう進化の過程をたどったのかというお話や、人間のみが、「必要以上の食物を確保し、持ち帰り、分配して、自分で決めた人たちと一緒に食べる」こと。食事が人間の最も古い文化であり、共感の始まりではないかという内容のお話でした。人間のみが共同体(コミュニティ)を自由に出入りできること、家族と共同体の両方を持っていること、そして、教育は本来“Gift”であることや高校は地域の“identity”であるべきという言葉が印象的でした。グローバル資本主義が進む社会で、私たちが高校教育に臨む姿勢、方向性に強い示唆を与えてくださる貴重なお話でした。

 その後東京に場所を移し、5月29日〜5月31日に、一橋講堂と東京大学駒場キャンパスで開催された全国大学入学者選抜連絡協議会大会に参加しました。多くの国公立大学の教員による発表がメインでしたが、高校における探究学習や、大学入試制度の在り方、理系大学における女子生徒対象のクウォーター制度の是非等、国内外の現状を踏まえた教育課題について研究発表や議論が行われました。基調講演の(独)教職員支援機構理事長 荒瀬克己先生は、学びのプロセスを評価することの重要性が語られ、「探究の過程における生徒の思考や態度を重視し、主体的に探究の過程全体をやり遂げることに指導の重点を置くべきである」と述べられていたのが印象に残りました。西宮北高校、西宮苦楽園高校でも探究学習に学びの軸足をシフトしましたが、成果重視ではなく、生徒が他者との対話を通して自分の頭で考えながら進めていく、そうしたプロセスの先に成果が現れる、この順序を取り違えないように進めることが肝要であると感じました。

 実は、この2つの研修の間にとても胸熱な出会いがありました。一月ほど前、学校まで足を運んで「同窓生として何か北高の力になれないか」と申し出てくださったご縁で、北高6回生4名の同窓生の皆さまと東京原宿でお会いする貴重な機会をいただきました。会社の会長職をしながら過疎問題や新規農業者支援に取り組むNPOと行動を共にされたり、教育格差に対応するための次世代型インターナショナルスクールの設立に携わっておられたり、関東の地で地域の方の信頼を得て民生委員をなさっていたり、介護職を極めてケアマネジャーの指導的な立場で活躍されていたりと多様な道を歩まれていますが、自分だけではなく他者のために何ができるのかという姿勢を自分の生き方、在り方にされていること。「生活は質実素朴に 心は高く豊かに」の建学の精神を未だ宿しておられる姿を拝見し、私としてはとても感慨深いものがありました。懐かしい当時の話、恩師の話にも花が咲いて心温まるひとときでした。ありがとうございました。

 高校にとって同窓会は学校教育を豊かにしてくれる応援団ですが、西宮苦楽園高校生にはまだ同窓生がいません。先日、北高同窓生で現役大学生の眞田雅崇さんに「海洋ゴミ問題」について生徒が学びましたが、一般的には、社会に出て人脈を広げながら経験を積んで自立した立場になったり、専門性を磨くまでには10年、20年の年月がかかります。これからの高校教育は、学校の教職員だけが関わるのではなく、地域や大学とのつながりである横糸と同窓生とのつながりである縦糸で紡いでいくことが、生徒の学びを豊かにする。。。と、最近こんなことを考えたりしていました。今後も北高の同窓生の皆さまに、北高生と苦楽園高生の学びを支えるお手伝いをしていただけると幸いです。