第51回卒業証書授与式

2月29日(木)、ご来賓の方々そして保護者の皆様のご臨席を賜り第51回卒業証書授与式が行われました。様々なことがあった3年間の高校生活で成長を遂げ、しっかりとした足取りでこの北高を巣立って行きました。51回生187名の未来に、希望と幸福が満ちていることを願います。

                  式    辞

 ゆっくりと時間をかけて膨らんだ白木蓮の蕾みが、今まさに天に向かって咲き誇ろうとしています。校庭の樹木にも春の息吹が漲る今日のよき日に、多数のご来賓の方々並びに保護者の皆様の御臨席を賜り、兵庫県立西宮北高等学校 第五十一回卒業証書授与式を挙行できますことは、本校にとりまして格別の慶びであり、衷心より厚く御礼申し上げます。ただいま卒業証書を授与しました一八七名の卒業生の皆さん、卒業おめでとうございます。雨の日も風の日も、そして雪降る中もただひたすらにこの学び舎に通い続け、本校の課程を修了して、本日めでたく卒業証書を手にされました。この三年間苦楽を共にし、支え励まし合った友との日々が今、懐かしく脳裏に浮かんでいることでしょう。二〇一九年に発生した新型コロナウイルス感染症によるパンデミックは、君たちの中学校・高校生活を直撃しました。これまで当たり前のようにできていた多くのことが制限され、経験したことのない生活様式や学校生活を強いられました。そしてこの経験は、私たちに「常に人間が、周囲の環境に大きく影響を受けながら生きている」という事実を突きつけ、これからの社会が、「今まで通り」では、全く通用しないのだということを学ばせました。こうした中にあっても、五十一回生は常に誠実に、そして勤勉に学校生活に取り組んでくれました。ルスツリゾートへの冬季生活訓練合宿では、氷点下一〇度を下回る過酷な環境の中でも、「すごく楽しい」と語り、頬を紅潮させ笑顔を見せてくれました。最終学年で迎えた北高祭では、賞を取り逃がした時に見せた悔しさの涙。そして早朝の教室やピロティで問題集に向かう真剣な横顔。私はそうした姿を見ていて感動し、時に「美しい」とすら感じる瞬間がありました。「花はなぜうつくしいのか」。詩人の八木重吉は「ひとすじの気持ちで咲いているからだ」と綴りました。美しく見せようとか、認められたいという意識ではなく、唯々真っ直ぐで一生懸命な姿、君たちの「ひとすじの気持ち」が美しさを放っていたのだと感じています。多くの困難を乗り越えて高校生活を楽しもう、成長しようと努力し続け、今日ここに卒業の日を迎えた君たちに心から敬意を表します。

 さあ、いよいよ旅立ちの瞬間がやってきました。この輝かしい門出にあたり、私の願いとするところの二点を述べて、餞といたします。まず一つ目には、「完全主義からの脱却」と「Fail Fast」という考え方です。君たちは何かに挑戦しようとする時には、計画を立て周到に準備をし、不安が払拭されるまで計画を練り上げて実行する。あるいは、失敗を恐れて挑戦自体をやめてしまうということがこれまでにあったと思います。私を含む多くの大人も、そのようにして生きてきました。しかし、その考え方では、これからの社会では立ちゆかなくなります。世界では、深刻な紛争が勃発し、環境破壊による地球温暖化や新興感染症、火災や地震などの災害、そしてAIの台頭による急速な技術革新など、複雑で変化が激しく、予測が困難な状態が続いており、いわゆるVUCA時代とも呼ばれています。大人が正解をもたない社会、今まで常識だと思っていたものが非常識に、非常識だと思っていたものがこの先の常識になっていくそうした社会です。こうした時代には、そもそも完全な状態で物事を遂行することは不可能であり、「失敗は許されない」という完全主義、完璧主義から脱却しなければ何も始められません。ある程度のめどが立っているのなら、できる限りの準備をした上で「まずはやってみる」ということがとても大切です。Fail Fastは、「早く失敗せよ」という意味です。「まずはやってみる」「とりあえずやってみる」。すると、必ず失敗が出てきます。失敗があれば、原因を振り返り改善していく。刻一刻と変化する環境・状況の中で改善を重ねていくのです。一人で難しければ、課題解決や改善のアイディアをチームで考え、協力を得る。そこに協働や共創、他者との関係性が生まれてきます。これからの社会で生きていくためには、課題発見力、創造性など様々な能力が必要とされるということを、これまで何度も耳にしてきたと思いますが、まずは何かをやってみないことには、そのような力を身につける機会すら逸してしまうのです。「完全主義からの脱却」と「Fail Fast:早く失敗せよ」。何かことに向かうとき、この言葉を常に念頭に置いてください。

 二つ目には、「挑戦する『勇気』を持て」ということです。君たちはちょうどiPhoneとAndroidというヒット商品がこの世に出た頃に生まれ、小学校に上がる頃には日本でのスマートフォンの普及率も60%を超えていました。体の一部のようにスマホを使いこなし、SNSやアプリを活用し、現実社会とメタバースという二つの社会で生きることが普通となっています。まさにデジタル社会の申し子であり、Z世代と呼ばれるその価値観は、これまで経験したことがないほど、親世代以上の価値観と違いが生じているのです。何かに挑戦してみようと動き出したとき、こうした価値観の違いが一因となって、反対にあうことも多々あるでしょう。その時に、好ききなこと、得意なこと、やってみたいこと、この道でなら頑張ろうと思えることであればあきらめず、信念をもってその道を突き進んでほしいと願います。そのためには当然努力も必要ですし、努力を続けなければ理解者や協力者も得られません。自分の直感を信じ、挑戦する勇気を持って道を切り開いてください。西宮北高校もまた、皆さんと同様、社会環境に対応しながら変化していかなければなりません。挑戦し続ける君たちに恥ずかしくない母校であり続けられるよう私たち教職員も一丸となって努力していくつもりです。

 最後になりますが、保護者の皆様に申し上げます。多感な時期の子どもたちと向き合い、この三年間一方ならぬご苦労があったことと拝察いたします。これまで慈しみ育ててこられたお子様の立派に成長した姿を前に、感慨もひとしおのことでしょう。教職員を代表し、心からのお祝いと敬意を表します。そして改めてこれまでのご協力に感謝申し上げるとともに、今後とも本校教育の発展のためにご理解とご支援を賜りますことをお願いし、併せて卒業生とご家族の皆様の益々のご健勝とご多幸を祈念いたしまして式辞といたします。

         令和六年二月二十九日

                 兵庫県立西宮北高等学校長 宮 本 美 枝 子

   

     

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