52回生が、立派に巣立っていきました。答辞では、先輩達の背中を追って学校生活を送った日々や、最高学年になってからは、そうした背中が後輩達に示せていたのかという思い、北高の伝統を引き継いでいくことの重さが涙と共に語られ、慶びと感動とそして少しばかりの寂しさが胸を過ぎる卒業式でした。ご来校いただきました、ご来賓の皆さまと保護者の皆さまに心より感謝申し上げます。
式 辞
六甲の山並みにも、若々しい春の気配が満ちゆく今日の佳き日、多数のご来賓並びに保護者の皆様の御臨席を賜り、ここに兵庫県立西宮北高等学校 第五二回卒業証書授与式を挙行できますことは、本校にとりまして格別の慶びであり、衷心より厚く御礼申し上げます。只今、一九五名の卒業生に対し、本校の学業を成就した証として、卒業証書を授与いたしました。西宮北高等学校の名に恥じぬ学校生活を送り、勉学に勤しみ、立派に成長してこの日を迎えた皆さんに、本校を代表して心からの敬意と祝意を表します。保護者の皆様には、この慶びをお祝い申し上げるとともに、三年間にわたる心のこもったご支援とご協力に改めて御礼申し上げます。また、本日ご臨席を賜り錦上に花を添えていただきましたご来賓の皆様方に、一同に代わりまして厚く御礼申し上げます。
さて、皆さんの脳裏には、この三年間の哀歓が友の姿とともに走馬灯のごとく駆け巡り、熱い思いが込み上げていることでしょう。そして、その胸中には、これから進むべき未来への不安と希望が入り交じっていることでしょう。しかし皆さんは、この学び舎で努力を重ね、失敗をし、多くの経験を通して人として大きく成長しました。自らの可能性を信じ、しっかり顔を上げて新たな一歩を踏み出しください。この輝かしい門出に当たり、私の所感の一端を述べて皆さんへの餞といたします。今まさに世界では、深刻な紛争や、地球温暖化、AI・ICT技術革新による急速なデジタル化が進んでいます。バーチャルリアリティが生活の一部となり、デジタル社会がさらに加速する時代に生きる皆さんに、あえて「真・善・美」という言葉を伝えます。 「真・善・美」という言葉は、ギリシャ時代の哲学者の概念として生まれ、時代の変遷、国を超え少しずつ意味を変えて現代にも生きている言葉です。「真」は、「何が真実、真理であるのか」、「善」は善悪の善で、「どう考え行動することがより良いのか」。そして、「美」とは審美性、「美しさ」を意味しており、まさに人生は、この「真・善・美」の探究の道のりです。特に「美」の感性は、四季折々の美しい自然を五感で感じ、美しい文学や音楽、作品などの芸術に触れることを通してふくらみを増していきます。対象と向き合い、感じ取り、他者の価値観や考えに触れながら、自分の心と対話する。そうした過程の繰り返しにより「美しい」と感じる心は育ち、その心の先に「自分の在り方の美しさ」や「自分の生き方の美しさ」が意識できるように成長するのです。デジタル社会であるからこそ、画面を通さない本物に触れ、これからの人生であなた自身の「真・善・美」に対する感性や価値観、信念を磨いてください。そして、これから遭遇する多くの選択や人生の岐路で判断に迷った時には、あなた自身の「真・善・美」が指し示す方向に歩んでいってほしいと強く願います。
卒業生の皆さん、お別れの時がやってきました。折あらば、是非とも母校へ立ち寄って、後輩のみんなを激励したり、先生方との心のつながりを温めたりしてください。最後に皆さんのご多幸とご活躍を切に願い、式辞といたします。
令和七年二月二十八日
兵庫県立西宮北高等学校長
宮 本 美 枝 子