本校会議室において、ベトナム研修旅行参加生徒26名を対象に、京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科 准教授伊藤正子氏、同研究員 下條尚志氏をお招きし、両名がベトナム研究で感じたことについて講義をしていただきました。ベトナム語の簡単なあいさつを教えていただいたり、研究内容や進め方について生徒の質問に答えていただきました。
伊藤先生からはベトナムの略史について映像やお話を伺ったあと、54の公定民族、特にベトナム西北高地に住むモン族について説明をしていただきました。最後に多民族国家において国家の政策と少数民族自身の反応・対応をみることでどのうように「折り合い」を付けて国家として保っていくのか、日本における少数民族や少数派への配慮についての課題を上げてもらいました。研究というものが、ありのままをその通りに表現するのではなく、その背景やシステムについて深く掘り下げ、時には厳しく批判することの大切さを教えていただきました。
下條先生はベトナム南部のメコンデルタ農村地域をフィールドに、国家が編纂する「正史」とは異なる、一般庶民の描く「オーラルヒストリー」を対象に調査したことについてお話をいただきました。下條先生はベトナム南部ソクチャン省の一農村に1年3ヶ月住んで、住民の生い立ちや経験についてインタビューしたり、日々の生活や祭りを体験されたそうです。ベトナム戦争時には兵役免除のために僧侶になる人が多数したり、厭戦的な雰囲気が広がっていた時代状況を示唆する発言があったりと、伊藤先生の映像で映っていた戦争に勇敢に参戦した兵士とはまた違う「生き残るのに必死であった人々」がいたことをお話していただきました。研究者として「1次資料」にあたることの大切さや歴史を複眼的にみる力を養う必要性を教えていただきました。