令和2年1月27日 創造基礎A 薮中三十二氏講義「米中対立における日韓関係の位置づけ」

本校同窓会館において、創造科学科4期生(1年生)40名を対象に、立命館大学客員教授・外務省顧問の薮中三十二氏をお招きし、「米中対立における日韓関係の位置づけ」というテーマで講義を行った。前半は、グローバルリーダーの資質やトランプ大統領と米国の世界に与える影響について生徒と議論しながら話を進めていただいた。後半は、今後の日米関係のあり方について「日米同盟の強化」「自衛力の強化」「多角外交の推進」という3つ観点からディベートを行った。そのうえで、日韓の現状とこれからについて講義をしていただいた。講義時間は3時間半に及び、生徒からは質問が途絶えることなく熱気に満ちた講義となった。

〈生徒感想〉

今回は大きく分けて2つのことを学んだ。グローバルリーダーの力についてと、薮中氏の考える外交と世界情勢だ。まず、グローバルリーダーにとって必要な力は簡潔にまとめると自分の考えを持ち、それを発する力だ。その力を持っていることでグローバル社会では十分な交渉ができて、強く生きれるということだ。次に、外交と世界情勢についてだ。様々な点において日本は外交のターニングポイントに立っていると思う。中国が日本に近寄っている点、ASEANに信頼されている点、アメリカと仲の良い点、日本の経済力や文化がまだ素晴らしい点においてだ。その今をより良い方向へもっていくのが、私たちの世代であることも改めて感じた。

この講演を聞いて、活発に議論したことで、クラスのみんなは(僕も含めて)多くが薮中さんの意見に賛同したと思います。しかし、それだけでいいのでしょうか?このままでは他の凄い人の意見を信じてばかりだと薮中さんからの隠されたメッセージが見えるような気がします。韓国との交渉においても、自分の言うべきことはしっかりと言う必要があるのと同じように、私たちも自分の意見を持つべきだということだと思います。今回3パターンの日本の防衛方法について議論をしたときに、思い切って自分の意見を言うことができ、そのような力が身についたと思います。今後は、その意見を正確・簡潔にまとめて話す力をつけていきたいと思います。

グローバル人材について、実は世界にもグローバル人材が多くいるわけではなく、日本でもすべての人がなる必要はない。また、世界ではいきすぎたグローバル化により、バックラッシュが起きている。そんな中、日本は少子高齢化等の課題を背負っているため、海外進出をせざるをえない。そんなグローバル人材に求められるのは「自分の考えを伝える力」である。コミュニケーションは双方向であり、特に対外の交渉では自分の意見を述べないと、すぐに相手のペースに飲み込まれてしまう。攻めて、むしろKYになることが大事だ。人間力も必要かもしれないが、定義が難しい。色々なことに関心、疑問をもつことや、自国と相手の国の歴史を知ったりすることが、自分を深めることにつながり、それらが高じて人間力に繋がるのではないか。お互いで意見を出し合い、本質的な問いかけを続けることも重要である。

国際社会での交渉の場において「どうせ日本は言いなり」という偏見が強く結びついており、それが外交力の欠如に繋がっていると聞いた。その偏見をなくすために日本が何度も主張をして、それまでのイメージを払拭することが重要になるのではないかという意見を持った。また、トランプ氏は元ビジネスマンということもあり、自分の考えで即決する傾向にある、つまり自分中心で物事を進める癖があると聞いた。そのことが仲間(同盟)を大切にするというアメリカの伝統を打ち破るという事態に繋がり、古来から大切にされてきた中東との関係も簡単に切ろうとするような安易な行動に走っているのだなと意見を持った。”アメリカファースト”は一見アメリカ国民のための政策のように見えるが実際はアメリカ国民の首を絞めているのではないかという意見を持った。

今世界で最も深刻な問題になっているのは「アメリカの力が強すぎること」である。現アメリカ大統領のトランプ氏は、瞬発的に物事を考え行動する人で、先のことをあまり見通せていない人物。アメリカファーストの精神を掲げており、同盟や機構等、今までの制度が崩れ落ちている。大統領の力が大きくなり、また、SNSが広く普及したことにより、直接的に止める者がおらず、世界システムが瓦解し始めている。また、中国が着々と力をつけてきており、将来は、アメリカと対等に並ぶかもしれない。世界(特にアメリカ)が中国をどのように見ているかが、今最も注目すべき点である。そして日本も、ハードパワー、ソフトパワーともに大きく、世界からの評価も高く信頼も厚い。今の日本は「外交力」が試されている。韓国との問題も下手に出ず堂々とし、前向きな交渉を進めることが最も重要である。いかに日本の外交力を世界にみせられるかで、今後の立場が大きく変わる。

後半の講義で、日本は「1,これからもアメリカに頼り続ける」「2,軍隊を持ち、自分自身が強くなる」「3,中国などの諸外国と協力する」のどの道に進んでいくべきかという議論を3班に分かれて行った。その中で私は主に2つの力が身についた。1つ目は批判する力だ。あら探しというと聞こえが悪いが、相手の意見を聞いて筋の通らないところを見つけるためには、相手の意見を深く理解していなければならない。しっかりと聞き、穴を探し、指摘していく、それを繰り返していくことで、全体として良い結論が生まれると思う。2つ目は、メタ的に物事を捉える力だ。議論が盛り上がってくると、ついつい自分の意見だけを通そうと思いがちだが、一歩引いて俯瞰することで、物事の本筋を捉え直すことができ、冷静な判断ができると思った。

薮中先生は「みんながグローバル人材である必要はなく、世界を相手にする者のみがグローバル人材であればよい」とおっしゃっていましたが、私はそうは思いません。流通革命が起きた今、海外からの輸入品が日本の市場に広まり、国産の商品の売れ行きは減少傾向にあります。これは日本にグローバル人材が少なかったためではないでしょうか。私は「みんながグローバル人材である必要はない」のではなく、「グローバル人材しか生き残りが困難な市場」になっていくのだと思います。また、私は日本の国力を上げるのが最優先だと思いました。なぜならアメリカやアジア諸国と強いつながりを作るのには、日本に協力するメリットが相手にないからです。

カテゴリー: SGH(学科4期生), 創造科学科4期生   パーマリンク

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