本校同窓会館ゆ~かり館において、創造科学科3期生(1年生)を対象に、WHO神戸センター上級顧問官 野崎慎仁郎氏をお招きし、「UHC(Universal Health Coverage)に向かってともに歩もう」というテーマで講義を行っていただいた。UHCの実現のために、WHOの考え方や取り組みについて、また、超高齢社会である日本が今できることなどについてお話していただきました。生徒はUHCに対する疑問や高齢社会の課題が日本だけでなく世界の問題となることについて野崎氏と議論した。
〈生徒感想〉
2030年までに貧困のない世界をつくることが目標だとは理解していたけど、目標達成で終わりではなく、その世界が続かなければ意味がないというところまで考えられていなかったことに気がつきました。UHCは「誰もが等しく」「適切」ということに重点を置き、サービスを受ける側のビジョンを大事にしようとしていることがわかりました。そして、この取り組みは国民を中心に置き行われているため、国民の参加が必要になってくるということがわかりました。各国の状況に合わせて進めていくため、世界にとってもとても良い取り組みだということが理解できました。
今回の講義で私はUHCは特に経済的な面が重要であることを学んだ。技術的な面ではどの国でも十分実行することができるようになっているが、WHOの課題が感染症から生活習慣病に変わってきているため、今まで貧困であった国だけではなく、先進国にとっても経済的な面でとても大きな負担になっていることを知った。また、経済面だけではなく、人材の面でも問題が発生していることが分かった。人材の育成不足だけではなく、国外へ労働に行くことによって本国が人手不足になったり、国同士で人材の争奪戦になるなど、今までになかった問題が増えてきていることを学んだ。
日本は世界全体がUHCを実現するために、UHCの実現から遠ざかっている国にアプローチして支援していくのが良いのではないかと思った。日本は保健システムが十分に整っていて、UHCの実現は目前だろう。これからは、UHCの実現による利益をより大きくするため、日本は他国の支援を積極的に行うべきだと思う。しかし支援とはいっても日本が一方的に高度な医療技術や安価な医療サービスを与えていくのでは支援される側の国は自立できない。また、国によって社会の状況は異なっているため、どの国にも同じ支援をするのでは通用しない。よって、日本は支援する国の「独自の方向性」を尊重しながら、より効果的な支援を行えばUHC実現に近づけるのではないかと思う。さらに、日本はUHCの実現が近い国ということをアピールし、UHCの重要性をもっと日本に、世界に広めていくこともできると考える。
講義の中で野崎さんがおっしゃっていたように、日本は世界で1番の高齢化社会であり、アジアのこれから高齢化していく国々の見本となるので、これからは成功だけを求めた高齢化対策などを行うのではなく挑戦的なものを行っていくべきだと思います。そこで失敗してもそれはこれからの世界に役立っていくような貴重なデータになると考えました。また、今貧困などで苦しんでいる国々には、これまでのように支援しないわけでもなく、支援しすぎるわけでもない、適切な具合の支援を続けていくことが重要だと考えました。
私がこの授業で学んだことは、皆が同じ目標を達成することはできないけれど同じ目標を持つことは大切だということがわかった。この授業ではUHCだけでなく今の世界の現状について知ることができた。開発途上国があと5年でなくなると聞いてとても驚いた。しかし、人々の格差は残る。その格差によって人が死ぬことがあってはいけないと思った。また、この短い間に必要とされること、物が変わっていることについていかなければならないと思った。これは当事者意識を持たないといけないということだ。最近私の周りに「当事者意識」というフレーズがまわるのだがUHCに関して言えば、今の日本のような状況におちいるアジアの国々のために将来何かを変えられるように、今の日本の当事者として現状を知ることが必要だと思う。GOOD HEALTH BEING と大きなくくりになったのはそれぞれの国、人にそれぞれのGOOD HEALTH BEINGが求められるからだと思った。
この時間では、WHOは途上国の保護・医療サービスに昔は重点を置いていたが、今は先進国の高齢化問題を視野に入れていることを学び、WHOが高齢化対策を提唱するほどの危機であることを知りました。つまり、医療や社会福祉サービスの改革が僕たちの日本にも必要になってきたのです。そのイノベーションを起こすときに必要なことが「市民の声」です。地域の福祉の現状を知り、発信する行動力が必要だと思いました。このままでは高齢化の波に押され、のまれるばかりです。一人一人の医療や社会福祉の声を集めていかなければならないと考えます。そして、政府はそのような声を拾い、耳を傾け、サービスの向上に努めるべきです。僕たちはこれから何が起きるか予測もつきにくい「超高齢化社会」の上に行くことになります。一人一人が声を上げて意見を言い、その状況に合わせた医療・保健サービスを作りださなければなりません。そのような意見の発信力・行動力を身に着けたいと思いました。