本校同窓会館ゆ~かり館において、創造科学科2期生(1年生)を対象に、「国民が納得する『やさしい社会』を実現する方策とは」というテーマで講義を行いました。講師として、財務省大臣官房文書課広報室 當間和幸課長補佐と財務省主計局調査課 大炊御門憲嗣課長補佐をお招きし、またグループワークのサポートとして近畿財務局と神戸事務所からあわせて6名の方に来ていただきました。まず、大炊御門氏から「今の日本、これからの日本について考えよう」というテーマで、日本の財政に関わる課題について講義をしていただきました。次に、財務省が作成したシミュレーション教材を使って予算案を組みました。最後に、予算案のポイントを視覚的に説明する「ポンチ絵」を作成し、発表しました。ふりかえりでは、當間氏から以前講師として来校した原田氏にふれながら若者の政治参加の重要性について、大炊御門氏からは今国会で審議中の平成30年度予算の概要について生徒作成予算案と比較しながら説明をしていただきました。
1.重要課題を考えるにあたり、政府は、現代のどのような課題に取り組むべきだと考えましたか。
私たちの班は、公共施設の老朽化、家庭内の教育費高額化という課題に取り組むべきだと考えた。なぜなら、道路や橋、トンネルなどは、2020年東京オリンピックが開催されるにあたって、多くの外国人が日本を訪れるときに、事故が起きてしまっては、日本の信用に関わるからだ。また、それらの整備は全世代の人にも関係していることも大きな理由だ。教育の無償化は、親の金銭的負担を減らすため、子どもが生みやすい環境づくりにつながり、少子化に少しでも歯止めをかけることができると考えた。
私は、政府が抱える多額の借金に着目し、借金返済を優先すべきだと思いました。現在、国の借金は年々増加しており、このまま放置すると私たちの世代だけでなく、将来にも大きな負担を背負わせることになるし、公共サービスや外交など様々な面で不都合が出てくるはずです。だから、今から少しずつ返済していくべきで、他の制度や課題の改善は、借金問題が解決した後にすべきだと考えました。
2.提案した予算の増減による影響は、どのような人のどのような事柄に及ぶと考えましたか。
様々な意見が出たので、1つの項目にしぼれませんが、印象的だったのは生活保護受給者の人権の話が出たことです。生活保護を受けている人の中でも、少数ですが明らかに自力で生活できる人もいて、病院を乱用している人もいるそうです。そこで、生活保護受給者が行ける病院に制限をかける意見が出ましたが、財務省の方から、そうすると生活保護の人の病院を選ぶ権利が侵害される恐れがあると言われました。多面的に物事をみないといけないなと感じました。
私たちの班は、定年を60歳から65歳に引き上げ、延長雇用を70歳まで引き上げることで、年金受け渡しの時期を遅らせ、かつ労働人口も増やせるという内容を中心に提案しました。こうすることで、若者にとっては1人あたりの支えるべき高齢者の人数が減り、負担が軽くなるのではないかと考えました。一方で、年金受給年齢の引き上げや労働延長に対して、60代の方にどのようなサポートが必要なのかを考えなくてはいけないと思いました。
3.財政について考えてみて、どのようなことを悩みましたか。
税収を増やすため、税率をアップすると、負の連鎖が起きてしまうことに悩んだ。例えば、法人税をアップすると、利益を上げている企業は、社員の給料が減額→所得が低下→消費低下→景気低迷となる。単に何かの税収をあげればいいという簡単な話ではないと感じた。しかし、同じように良い連鎖も起こせるのではないかと思う。負の連鎖による損害とりも正の連鎖で得る利益の多くなればいいと考えた。
私は前回の授業で、「食料安定供給」「教育」は増加、「公共事業」は減少にするのがよいと考えました。しかし今回、班では私とは逆の方向に話が進みました。「国際化が進むから」「無駄な工事が多いと思うから」など目先の自分の考えで意見しましたが、もっと背景を考えなければならなかったことに気づきました。「少子化だから全体的にかかるお金は減るのでは」「オリンピックがある」といわれると納得してしまいました。もっと総合的に考えないといけないと思いました。
4.この授業で、あなたは何を学び、どのような力が身についたと考えますか。
講師の大炊御門さんから指摘を受けて、正確で根拠のある理屈を立てて予算を増減しなければならないことを学んだ。国民が納得してくれる、つまり全ての人にフィットした方策を考えなければならないため、様々な状況の人がいることを理解しなければならない。また、理屈を立てるために、専門的なことを知らないと、十分に説得力をもたせることもできないことが分かった。これらの力は「創造」の今後の研究活動で身に着けていきたいし、専門的な事柄であればあるほど予習が大切だと感じた。
最初、私たちの班では、年金の給付金を減らす提案で進めましたが、講師の當間さんにそれでは国民が納得しないと指摘されました。しかも、その上に消費税10%アップの話になっていたので、国民に大反対される案になっていました。それを年金は「定年を上げて、年金受給が遅ければ遅いほどもらえる割合が多くなる」今のしくみを補強するものにする。砂糖税(嗜好品のみ)や酒税・たばこ税の増額により「健康に生活習慣病を減らす」ことで、医療費の減額、税収の増加までできました。
全国民が納得する増税はない中で、考え抜いた案を批判されるのは大変だと思い、政治について真剣に考える授業だった。多くの人の利害を考え、できるだけ損害が少ない方法を考えるのが難しかった。
今回学んだことは、一人ひとりの立場の違いで意見も違うということです。これを踏まえた上で自分の意見と相手の意見が違った場合、冷静に両方の意見を比較し相手を納得させる説得力が必要で、また相手が正しいと思った場合は自分が身を引くことも大切だとわかりました。限られた資源をどのように配分するかというテーマで普段話すことはないのですが、今回議論してみて、財政などの政治は他人事ではなく自分の意見をもつことが、今後大切だと思いました。私は今日、皆とは違う意見でも論理的に説明をすれば理解してもらえることがわかった。