関西セミナーハウスにおいて、「拡散するテロ~ヨーロッパでなぜテロが起きるのか~」をテーマに研究している創造科学科1期生(2年)1名が、関西セミナーハウス活動センター主催2017年度開発教育セミナー第6回「もっと知りたいイスラーム~中東とヨーロッパの『今』から学ぶ」に参加しました。講師は同志社大学大学院グローバル・スタディーズ研究科教授の内藤正典氏で、「ヨーロッパの移民社会」と「中東情勢と国際社会」について講義を受けました。第一次世界大戦後から現代まで中東をめぐる情勢の変化とヨーロッパにおけるムスリムのおかれる状況について詳しいお話を聞くことができました。
〈生徒の感想〉
今回のセミナーで驚いたのは、内藤先生がヨーロッパとイスラームの共存は不可能だと話されたことだ。まず、ヨーロッパの多くの国では保守派の政党が与党となり、極右といわれる政党も勢力を伸ばしている。こうした政党は、ムスリムに対してナショナリズムの視点から「出ていけ」という。これはヘイトスピーチだと僕は思うが、ヨーロッパにおいてはこれは差別ではないそうだ。例えば黒人やトルコ人といった人種や出身国に対して差別的発言をすることはヘイトスピーチだとして法律で禁じられているが、宗教で一括りにしてイスラム教徒を差別するのはヘイトスピーチだとはみなされない。次に、ヨーロッパにおいては「イスラームは人権を尊重しない、性差別をする宗教である、そんな奴らを差別して何が悪い」という考え方が多いそうだ。このようにイスラームは「反自由の宗教」であるとも見なされており、右派だけでなく左派からも排外されており、結果的に、ムスリムは完全に孤立現状となっている。さらに、イスラームとヨーロッパ社会では根本的な概念が違う。例えばヨーロッパ社会では政治などに宗教を持ち込まない政教分離の概念がある一方、実践宗教であるイスラームは政教不可分である。それどころか、神のもとに全ての人間は平等と考えるムスリムにとって、人の上に立つ政治家の存在さえ異質なものなのだ。しかし、このような現実の中でも、世界に15億人いるムスリムのうちテロリストになる確率はとても低い。多くても5万人に一人程で、大多数の人は寛容な精神を持っている。それが、母数が多いためにムスリムの多くが過激思想を持っているかのように思われ、ムスリムのイメージ悪化につながっている。以上のように、イスラームとヨーロッパは互いに理解し合うことは不可能かも知れないが、内藤先生が示唆された通り、衝突を避けることなら出来るはずだ。そういった可能性も考えてこれから論文を執筆していこうと思う。