「休業中の皆さんへ」 県立赤穂高等学校  校長 行本 健一

 なぜ、今こんなことを書いているのか。それは休業中の皆さんが少し心配だからです。なぜ心配なのか。それは赤高の生徒諸君には、素直だけれど指示されないとできない人が多いと聞くからです。だからこそ、皆さんに訴えたいのです、「教えられるだけが勉強ではない」と。

 私は母親によく「高校生の仕事は勉強や」と言われました。何度も何度も繰り返し。私はその言葉に従い、いやいや勉強していました。漠然と大学に行きたいなあくらいの思いはあったものの、学校での成績は中の下。特に現代文は勉強した記憶はありません。1年生のうちは国語の点数はそこそことれていたものの、2年生から急降下、とうとう校内偏差値30点台にまでなりました。数学はもとより苦手でしたが、これも欠点の連続で危機的な状況になりました。それでも大学に行きたかった私は、大学受験ラジオ講座(今はもうありません)に賭けました。わずか1時間の番組で、1日2教科、30分ずつの構成です。1時間のラジオ講座のために、必ず事前に問題を解き、その解説をラジオで聞き、そして似たような問題を解く。すると、例えば現代文にも勉強方法があることや、古典文法の大切さなどが身にしみてわかりました。ここからは「させられる勉強」ではなくなりました。自分で決めた勉強ですから。結果的には大学受験は成功しました。この方法がすべての人に通用するとは思いませんが、「させられる勉強」から脱出すること、そして自分を見切らないこと、これは誰にでも通用することではないかと思っています。

 私は、皆さんに「妥協をしない」進路実現を果たして欲しいと願っています。「妥協をしない」とはどういうことか。それは「自分を見切らないこと」、「限界を超えようとする」ことです。限界とは自分が設定するものです。安易な限界設定は必ず後悔します。今、自分にできる勉強を休業に関係なくして欲しいと思います。学校から送られてきた課題をこなす、それは当然です。授業の一環ですからね。それに加えて、特に3年生の諸君には、「自分の限界を超えようとする」勉強、具体的には受験問題集などでしょうか、に取り組んで欲しいのです。

 勉強とは自分でしなければならない、孤独な作業です。学習塾で教わる高校生が多い時代ですが、学習塾も今は休業状態です。世界中が休業状態にある時だからこそ、あなた自身が試されています。「自分一人で、将来に向けて、人知れず努力できる人間かどうか」と。勉強方法に正解はありません。どれだけすればよいかという目安もありません。何をすればよいか、人によって異なります。「学校で使っている問題集をやる」、それもよし。「クラッシーに取り組む」、それもよし。「前の学年で一度やった問題をもう一度解いてみる」、それもよし。試行錯誤も勉強のうちです。そうした努力は必ず報われます。そしてあなたの人生に必ずよい影響を与えます。

 皆さんの休業はさらに長くなるかもしれません。そうなると、ますますあなた方一人一人の考え方や生き方が試されます。何度も言います。生徒の皆さんには「妥協をしない」進路実現、そのために「限界を超えようとする」経験を今こそ、積み上げて下さい。これこそが高校生である皆さんに課された使命です。どうかお願いします。

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