国連大学において、グローバル・クラスルーム日本協会主催「第16回全日本高校模擬国連大会」が開催され、本校創造科学科7期生(1年)2名が参加した。本大会は、全国各地から集まった高校生が各校2人1組となり、実際の国連会議を模して、各国の大使として熱い議論を交わすというもので、本校はこれまで5回出場している。会議において生徒はドイツ大使を務めた。今回の会議は国際労働機関理事会(ILO)の「『多国籍企業及び社会政策に関する原則の三者宣言』の第6回改定“Tripartite declaration of principles concerning multinational enterprises and social policy”」を議題とし、①多国籍企業が提供すべき社会保障について、②新型コロナウイルス対応における個人データの扱いについてという2つの論点についての話し合いが行われた。議場では、似た考えを持つ国同士で集まり、グループごとに成果文書を残すべく活発な交渉が交わされた。本校生はスピーチをこなし、積極的に色々なグループと意見交換をしたが、最終的に決議文が棄却され、悔いの残す結果となった。
〈生徒感想〉
まず総評としては、予選会や灘会議と比べて圧倒的に積極的に立ち回れたと思っている。1日目は4回ほど質問、2回外交に行き他グループの進行状況を把握した。そして2日目が非常に良く、新たに作られたEU中心のグループで全員の意見をまとめてDR作成(スポンサー不足で提出には至らず)の補助を行い、欠点が報告された政策案に対しては解決策を提案することもできた。課題としては、DRがすべて否決だったので、たとえ国益に反する面が大きいとしても会議で何等かの結論を出すという国際益をもっと考慮しどれかの文書のスポンサーになるべきであったと思っている。
僕はオンライン、対面合わせて計4回の模擬国連に参加し、主に3つのことを学ぶことができました。1つ目は国際問題に関する知識です。特に議題であった、「移民と開発」「多国籍企業」についての理解度は大きく飛躍したと思います。2つ目は話し合いにおける立ち回りについてです。普段僕たちが行う会議は、チームで同じ目標に向かって、少なくとも最終目標の利害の一致した人たちと、策を話し合うことが多いです。しかし、模擬国連は立場や背景、利害が完全に異なる国々と互いに主張しあい、自らの国益を守り、同時に国際益を考えていかなければなりません。そのため、立ち回りにおいて自ら行動を起こさなければ、誰にも意見を汲み取ってもらえず、損をしてしまいます。3つ目は物事を多角的かつメタ的に捉えることの重要性です。まず、今回の模擬国連の本選では、2つ提出されたDRが最終的にどちらも棄却されてしまいました。これは自国の国益に反しているから、DRが通るよりかは進展がない方がマシだと考えた大使が多かったからです。しかし、それでは国際社会として多国籍企業の世界に及ぼす影響について、関心が生まれなかったことになります。果たしてそれが長期的にみたときに、自国の利益となっているのか若干不満な点があったとしても、ILOとして国際会議の場で多国籍企業に関する条文が出されたということは、社会に影響を及ぼし結果として、国民が自国の利益を考えるきっかけになり得たのではないかと思います。長期的に考えるということは、不確定なことも多く何か具体的な結果を期待できるわけではありませんが、それを考慮せずに目先の利益を追い求めると、持続可能な成長、進展は難しいということを覚えていたいと思います。