平成27年1月24日(土) LL教室 生徒11名参加 E班、F班
講 師: 尾ノ井 芳樹 氏 (J-POWER 電源開発株式会社 常務執行役員)
本校課題研究グループのE班、F班の研究内容をより深めるために、JPOWERの常務執行委員、尾ノ井芳樹氏をお招きし、ご自身のこれまでの電源開発に関わる経験、日本を取り巻く世界のエネルギー事情を語っていただきました。
E班は、これまで、開発途上国での電源開発を研究しており、特に、バングラディッシュでの水力発電に取り組んできました。しかし、その過程で、バングラディッシュの国土が平坦で、高低差を利用する水力発電には適さないことが明らかになり、研究が暗礁に乗り上げていました。尾ノ井氏のレクチャーにより、水力発電には高低差を利用するものと水流の速さを利用するものがあり、後者を使うと、バングラディッシュでも水力発電が不可能でないことを確認することができました。
F班のバイオマスやバイオ電池を利用した「難民キャンプに光を届けよう」というプロジェクトについても、現時点で、発電力不足や経費がかかりすぎるという理由で研究を中止するのではなく、あらゆるところに電源開発の可能性があることを教えていただき、両グループ共に自信を持って次のステップに進むことが可能になりました。
以下に、質疑応答の内容を簡単にまとめます。
質問事項:
① バングラディッシュで水力発電が困難であれば、螺旋型水車は有効な方法か?
-バングラディッシュでは適している。電力はあまり出ないが、人口100人程度の村であれば有効である。雨季乾季の差が激しいので、発電装置が流されたり消耗が激しかったりという点に気を付けること。
② マイクログリッド という方法は活用できないか。
-最も先進的な考え方。ケースによる。土地や気候条件をイメージすれば、その地域に合った電源開発が可能である。マイクログリッドという考え方では、水力発電以外に太陽光も可能である。それ以外の方法も考えられる。
*マイクログリッド発電とは、1基の大きな発電装置を使って発電するのではなく、小型の発電装置を分散して設置し発電する考え方。
③ バングラディッシュでは、マイクログリッドは可能か?
-送電線がないところ、長く設置できないところでは有効である。ミャンマー等、地産地消型が向いている国・地域は多い。発展途上国での需要をどのように見積もるかにもよる。
(例:日本人1人3kw 電子レンジ3台分。TVを見るだけであれば、その十分の1の電力量。)
④ 開発途上国を含めて海外で多く仕事をされているようですが、どのように言葉を交わしているのか?
-中国では筆談である。下手な英語でも、英語を使う方が良いと思われる。必要な場面では、通訳を活用するときもある。
⑤「難民キャンプに光をともす」という発電ビジネスのアイデアについてどう思うか?
-とてもいい話である。難民キャンプでは、糞尿からのメタンガスによる発電は有効ではないかと考えられる。ただし、機械に巨額の投資が必要となる。ODAなどは、戦争を起こさせないためにお金を使っている。また、難民に教育は必要で、夜の電力は必要である。相談できる機関にアプローチしても良いのではないか。紛争が無くなることは世界の利益であり、持続可能な活動になりうる。
⑥ 現在、最も効率のよい発電方法は?
-火力と原子力発電、水力も有効な発電方法である。工夫次第で、身の回りの物を使って発電は可能であり、高校生には、採算に捉われすぎないで、夢を持って取り組んでほしい。