2025年03月04日

「令和6年度 コウノトリ野生化対策懇話会」の議事要旨を公開しました

社会教育課

その他

令和6年度

日   時  令和6年12月10日(水) 15:00~16:30
場   所  兵庫県庁他 WEB会議にて実施

議事進行
1 開  会
2 出席者紹介(構成員、オブザーバー、事務局)
3 挨  拶
4 座長選出
5 協  議
6 その他
7 閉  会

懇話会出席者員(50音順)
亀田 佳代子  滋賀県立琵琶湖博物館 館長
萱場 祐一   名古屋工業大学大学院工学研究科 教授
河口 洋一   徳島大学大学院 准教授
谷口 幸雄   京都大学大学院農学研究科 准教授
豊嶋 省二   (公財)東京動物園協会多摩動物公園 副園長兼飼育展示課長
長谷川 雅美  東邦大学 名誉教授
村田 浩一   よこはま動物園ズーラシア 園長
吉田 正人   筑波大学 名誉教授
助言者(50音順)
江戸 謙顕   文化庁文化財第二課天然記念物部門主任調査官
玉谷 雄太   環境省自然環境局希少種保全推進室室長補佐

協議内容
(1)令和6年度野外コウノトリの繁殖状況について
・ 全国14県の52巣から136個体のヒナが巣立った。
・ 2005年の初放鳥以降、野外コウノトリが順調に増加し、2024年11月30日時点で、野外個体数は463個体となった。
・ 新しい繁殖地として新潟県上越市、茨城県小美玉市、千葉県野田市、鳥取県大山町など4箇所が増えた。
・ 初めて繁殖が確認されて以降、繁殖ペア数と巣立ち雛数は共に指数関数的に増加している。今後の動向に引き続き注目していく。
・ 豊岡盆地個体群を形成するというコウノトリ野生復帰グランドデザインの短期目標は達成できていると考える。今後、中期目標である、国内メタ個体群の構築に向け取組んでいく。

(委員からのおもな意見)
・ 全国の分布について、関東で繁殖した個体は野田でリリースした個体由来か。それとも一部豊岡由来もあるのか。
  ―現在関東で繁殖しているペアの多くは関東でリリースした個体が成熟した年齢になって関東で繁殖しているが、数個体は京都府や徳島県から流入した個体である。
・ リリースの出発地じゃなくて到着地ではどうか。
  ―即答が難しいので、データ等を調べてみる。
・ 福井から濃尾平野は距離的には近いと思うが、飛来はしているが繁殖してないのか。それとも繁殖環境が広大な濃尾平野でも見つからないのか?
  ―若齢個体がリリースされた後、成熟段階になった際に、元の場所に戻って繁殖を始めるというパターンがある。濃尾平野ではリリースはしていないことから、おそらく西日本と関東とを行き来する個体が中継地として通過しているかもしれない。チャンスがあれば、その場にとどまって繁殖に参加するようになるかもしれない。
・ 繁殖数を増やすにはリリースする箇所を、今後も増やしていく必要があるという理解でよいのか。
  ―リリースした場所やすでにペアが定着している場所から外側に広がっていくこともある。中部地方まで繁殖地が広がっていくようになるまでには、今しばらくかかるのかもしれない。
・ 経過を見ながら、どのように繁殖分布が広がっていくのかを見ることが大事であるということか。
  ―おっしゃるとおりである。
・ 同じペアは何年にも渡って子供を産んでいるという状況であり、全体に占める兄弟の割合は比較的高いのではと思っていたのだが、その状況は徐々に解消されていると考えて大丈夫なのか。
  ―リリース当初の個体が最後の1羽になったということ報告した。その意味では、野生復帰に向けた取組の早い段階でペアが成立し、繁殖していたペアはなくなっている。しかし一方で、その子供世代はまだ多くいることから、一世代、二世代下の集団も含めてということであれば、遺伝的な構成の偏りは依然として存在する。
・ 何年も繁殖している同ペアについて、ペアごとに、繁殖成功率に何か変化があるのか。あるいは地域によって成功率が違うのか。
  ―繁殖成功については、密度効果が出ている。特に豊岡のように繁殖地が混み合った状態だと巣立つ雛数が減少している。一方で、孤立した繁殖地では比較的多く、3・4羽巣立つ傾向がある。

(2)ブータン王国に生息するシロハラサギの保全活動への協力について
・ シロハラサギは、世界全体で生息数が60羽以下、インドからブータンやバングラデシュのあたりにしか生息していない。
・ 日本国内の研究者や獣医師で形成されたシロハラサギ保全チームから、コウノトリ・トキ・サギ類の飼育繁殖に詳しい方に協力の要請があり、支援チームが結成された。
・ 日本で使用されている専門機材の提供や現地とオンラインで繋ぎ応急的な治療についての研修を行った。また、現地に行き血液塗沫標本などの血液検査や解剖の仕方などを実際に実演してきた。
・ 一連の支援活動を踏まえ、コウノトリの郷公園とブータンの王立自然保護協会との間で、鳥類の保全推進や飼育下繁殖に関する協力活動を続けていくという主旨で協定が締結された。

(委員からのおもな意見)
・ コウノトリで培ったいろんな技術等を海外の希少種の保全にも活用していただいている
こと、とてもいいことだと感じた。国内のコサギやゴイサギなど、小型のサギ類が減って
いるので、そのようなところにも技術を応用できるといいと思って聞いた。

(3)コウノトリの郷公園の今後の足環の装着の方針について
・ 全国スケールでの個体数及び個体の動態の把握が必要。足環により個体識別することで個体数、性比、齢構成、空間分布などの情報が経年的に得られ、個体の分散や繁殖地の拡大を正確に把握し、域内集団の状態をモニタリングできている。個体識別が可能になったことで、再導入個体群を対象にこれまでに様々な研究成果が得られている。
・ 野外ペア数が年々増加し、繁殖地の拡大に伴って足環装着にかかる回数、時間、作業日数が増加しており、そのため作業日程の調整、総作業時間の調整が課題になっている。
・ 今後の方針としては、①足環装着に適切な日齢が集中する5月~6月の取り扱いについて検討、②十分な経験を持つ地域では当該地域の自治体等で足環装着ができるよう、徐々に移行していく、③自治体自身による足環装着に円滑に移行できるようなサポート体制について検討していく必要があると考える。
・ コウノトリの移動を全国スケールで解析したものは、足環による個体識別が可能という野外コウノトリ集団以外ではできない特徴を活かしたものである。こうした特徴を維持するために、将来的に全地域の全個体に足環が装着できない場合でも、一定地域において足環装着を継続することが重要と思われる。
・ 野生復帰は創始個体の少なさや飼育環境の選択圧などにより、野生下の母集団と野生復帰集団との間では、生態や行動などの形質のバリエーションの違いがあるということが指摘されている。これらは野生復帰個体群の長期的な存続の可能性に影響するので、リリース個体とその子孫が持つ形質の個体差が野外での生存繁殖に及ぼす影響について研究を進める必要がある。

(委員からのおもな意見)
・ 最初数年間はコウノトリの郷公園の方に来ていただき、足環装着等を行っていたが、徳島県では複数年にわたって足環装着をやっている。他の地域も同じように進められてきたかと思っていたが、徳島以外では勧められてなかったのか。
  ―他の地域でも同じように技術の移行というのは進めている。現状、何箇所かはこちらから向かうスタッフがサポートをするという形で移行は可能と思われるが、完全移行には至ってないという状態である。徳島県については早くから移行がされており、大変感 謝している。他の地域で進めていく際のモデルケースになると思っている。
・ コウノトリ野生復帰グランドデザインの中で個体群として安定しているというような状況を目指して取り組まれていると思う。それがある程達成されるところまでは、足環装着を行っていくものと思っていた。今の資料と説明を聞くと、できなくなる時があるかもしれないというように聞こえた。国内で他の鳥類での事例も多くなく、コウノトリは個体群管理という意味では重要なデータを取ってきているので、継続をベースにし、徳島のような事例を他で広げた方がいいのではと思った。
・ コウノトリ野生復帰グランドデザインを作られているが、その中で他の地方自治体に対する協力体制は、どのような方向性で決められているのか。
  ―トキやタンチョウ等、国内の希少種については、環境省で保護増殖事業計画が策定されており、この中で標識調査を実施するという項目が書かれている。コウノトリについては、足環をつけるということ(標識調査)の法的根拠はない。IPPM‐OWSで保護増殖事業計画に準じた形で、コウノトリ保全方針というものを作っており、この中で標識調査はなるべく可能な限り実施していくというようなことを謳っている。これを基に各自治体には説明をさせていただき、協力をお願いしている。
・ 法的根拠がないと難しい。あくまでも協力願いたいという形になるかと思う。
  ―基本的には協力をお願いする。そのために必要な技術的なことや足環そのものは提供するので、例えば高所作業車等は地元でお願いしますというようなこと。また、その自治体の管轄中で動物園や大学などがあったら、協力も求める。そのような体制で実施をしているという状況である。今後の足環装着の継続についても、基本的には各自治体のできる範囲で協力いただくということになると思うので、調整は必要になるかと思っている。
・ 関東では、IPPM‐OWSでの協力関係でコウノトリの郷公園の皆さんが、関東に出向いて、足環の装着を指導している。関東の飼育員も随分習熟してきており、関東の中で相互に教育しあっている関係ができているが、それを支援している1つの組織としては、関東自治体フォーラムがある。自治体フォーラムで、ある程度根拠を持った形で各自治体が努力していただいていると思う。
・ 文化庁と郷公園で足環装着の方向性や予算などについて議論したりはしていのか。
  ―県内での装着については、主体的に行っていっている。一方、県外の足環装着についてはそこまでご相談をしているところには至っていない。
・ 県と文化庁とIPPMの方での足環装着のこれからについての議論が非常に重要になってくると思った。
・ 足環装着の方向性について、検討会では時間も限られ、十分な議論ではなかったと思う。下記のように少し丁寧に今後の取り組みを記載してもらえたらと思う。①郷公園と文化庁が足環装着について協議を行い、その方法を全国展開していく。その上で、②ペア増加に備えて新しい方法もあわせて検討する・・といった流れが重要かと思う。(会後追加コメント)
・ 足環装着に関して、全数調査ができなくなり一部だけに標識をつける際、それが全体の個体群の動向を反映できるような個体の選び方、もしくは解析の際の補正が注意すべき点かと思う(年齢、性別など)。(会後追加コメント)

(4)その他(コウノトリの郷公園の1年間の研究成果)
・ リリース方法と年齢がリリース後の分散にどのように影響したかというのを明らかにした研究
・ ミトコンドリアDNAのハロタイプのうち特定の型が野外での生存率と関係しているのだということを明らかにした研究
・ 野外での怪我・死亡の原因を分析した研究
・ 一般的に飼育繁殖を行ってリリースしてそれが野外での生存繁殖に繋がり、野外個体群の動態に繋がる。
・ 長寿・縄張り性の鳥類でこの野生復帰を行う上で、成功のカギとなるのは、非繁殖個体から繁殖個体への順調な加入である。
・ リリース個体についてはミトコンドリアに対しても配慮し、なるべく均等にリリースされているが、ハプロタイプ6番が圧倒的に多くしめるという状態になっている。
・ 生存率については年齢とハプロタイプが影響してくるが、ハプロタイプ6番の個体は生存率が低い一方、オスの繁殖参加は早いという傾向があった。
・ 生存率の低いハプロタイプ6番がなぜ野外世代の多数派になったのかということについては、野生復帰の初期にリリースされたメスのほとんどが、ハプロタイプ6番だったということ。リリース個体は非常に長生きで、多くの子孫を残し、今の世代は、たまたまハプロタイプ6番が多かったという結果であろうと考えられる。
・ 今後の展望としては、様々な生存性と関わっているミトコンドリアDループを研究していく。

(委員からのおもな意見)
・ コウノトリの長期研究が学術的にも貢献する部分がある。非常に関心を持って聞いた。

【文化庁からの助言】
・ 足環装着に関して、課題として認識している。各地域に飛来したコウノトリに対して、自治体の担当者としても急な対応を迫られ、適切に対処することは難しいという相談を受けることがある。
・ 足環装着に関しては、遺伝的なモニタリングをするという観点から意味があると思っているので、できる限りの継続が望ましい。しかし一方で、400羽後半、500羽近くの野外個体がいる状況で、今後何羽まで足環装着を行うのかというのは、個体数増加にともない、おそらく今まで通り継続するというのは、現実的に難しい問題も出てくるかと思う。
・ 今後、精度を落とさないモニタリングを継続しつつ、一定のサンプリングをし、遺伝的多様性や分布の拡大等を押さえられ、定量的に問題ない足環装着の範囲を、専門家の先生方に検討していただけたらと考える。
・ できる内容、できる限りの支援はやっていきたいと思っている。予算面については、今後検討していかなければと考えている。引き続きIPPM等で検討していきたい。

【環境省からの助言】
・ 野生下でのコウノトリの繁殖も順調に進んでいるということを認識した。
・ 課題になっている足環装着について、今後本州での野生復帰を目指しているトキに関しても、足環装着にかかる自治体との調整等、コウノトリと同様の課題が浮かび上がってくることが想定されるため、その際には、先行するコウノトリでの経験を参考にさせていただきたい。
・ 今後も、コウノトリとトキの野生復帰が順調に進んでいくことを願っている。