「連画の河」の流れを歩きながら ― 芸術の流れに身をゆだねた旅 ―

はじめに

写真1.鑑賞ガイド

私は、よく晴れた金曜日に横尾忠則現代美術館を訪れました。

友人と約束していたので、午前10時ごろに阪急王子公園駅へ着きました。大阪の家の近くの駅から行くと、一時間以上かかります。その道は、毎週大学へ通う道とほとんど同じです。しかし、大学に入ってから今まで、私はこの場所を訪れる機会を逃していたことに気づきました。本当なら、もっと早く来るべき場所だったのかもしれません。最近になって、いろいろな活動に参加するようになり、ようやく自分の学生生活が始まったと感じられるようになりました。そして、その最初の場所が、この横尾忠則現代美術館だったのだと思います。

横尾忠則現代美術館を歩きながら

美術館に着いたのは午前10時ごろでした。受付はすでに開いていて、荷物を預ける場所や、1階から4階までの見学順路を親切に案内していただきました。

順路に沿って、私は2階から見学を始めました。壁には大きなキャンバスの作品がたくさん展示されていました。これほど大きなキャンバスの絵を見るのは初めてでした。作品のアイデアを考える時間はもちろん、一枚の絵を完成させるだけでも、とても長い時間が必要だったのだろうと思いました。

写真2.タヒチの冬(2024)

写真3.連画の河を渡る(2023)

展示されている作品のほとんどが、とても印象に残りました。抽象的な作品もあれば、分かりやすい作品もあります。しかし、どの作品も、一つ一つのモチーフや細かなつながりについて考えさせられます。それらは、たくさんの作品を一つにつなぎ、終わりのないイメージや色、そして記憶の流れを作っていました。

これこそが、「連画」という、この展覧会のテーマだったのだと思います。しかし、最初に見たときの私は、その大切な流れを気づかないまま通り過ぎてしまいました。

写真4.消滅と出現(2024)

写真5.迷路的(2024)

2階を見終わったあと、私は鑑賞ガイドを受け取りました。

でも、そのとき心のどこかで、「全部見終わるまでは開かないほうがいい」と感じました。

私は、その気持ちのまま行動することにしました。

そのまま歩き続けました。2階から3階へ進むにつれて、作品はまるで作者の記憶の流れに私を連れて行くようでした。私の頭の中の考えも、壁に並ぶ作品と一緒に少しずつ広がっていきました。

あまりにも近く、あまりにも生き生きとしていて、まるで一枚の鏡を隔てた向こう側の世界の入口に立っているようでした。

あと一歩だけ前へ進めば、その世界の中へ永遠に引き込まれてしまうような気がしました。

写真6.寺院の色(2024)

写真7.点ではなく丸(朝)(2024) 

4階に着くと、すべてが終わる場所のように思えました。しかし、壁に展示されていたラフスケッチを見た瞬間、それまでの作品に隠されていたことが少しずつ分かり始めました。

私は、下の階で見たアイデアにもう一度出会いました。

今回は、そこで終わるのではなく、新しい旅が始まるように感じました。私は手に持っていた鑑賞ガイドを読み、映像も最後まで見ました。その気持ちは、まるで謎解きをしているようでした。

作品の中には変えられたモチーフもあり、完成した作品とは少し違うスケッチもありました。

一つ一つの作品も、それぞれ自分だけの記憶を持っているように感じました。

2階と3階へ戻る前に、私はスケッチ展示室の外にある景色を見る場所へ行きました。

そこには、とても丁寧にデザインされた通路がありました。壁には切り込みが入っていて、まるで鏡の世界へ続く切れ目のように見えました。

そこから外を見ると、道の向こう側にある教会がきれいに見えました。その後ろには住宅街が広がり、その向こうには青い空と白い雲、そして遠くには静かな六甲山が見えました。

街はとても静かで、本当に美しかったです。

その景色も、一枚の額に入れられた作品のように見えました。

芸術の世界から現実へ戻ったとき、私は、この景色もきっと自分の思い出の一つになるのだと感じました。

写真8.4階の展望ロビー

写真9.展望ロビーから見た街並み

写真10.印象的な「目玉廊下」

おわりに

横尾忠則現代美術館へ来る前、私は現代美術について名前は知っていましたが、本当の意味ではよく理解していませんでした。しかし、この美術館を訪れて、現代美術とは、ただ一つの考え方ではなく、作者も見る人も、それぞれ自分の考えや質問、そして答えを見つけながら、人生や日常、社会について自由に考える芸術なのだと感じました。だから、美術館へ来る前の私は、この場所にはどんな作品があるのだろう、どんなテーマがあるのだろうと、いろいろ想像していました。そして、実際に見た作品は、その想像を超えるほど強い印象を与えてくれました。不思議で、まるで夢の中にいるような体験でした。その中でも、一番心に残ったのは、「連画」の流れでした。それは、もう二度と戻ることのない記憶の流れのように感じられました。

私は、作品を見ながら考えました。

「作者は、このたくさんのモチーフの中で、どこにいるのだろう。一つなのか、二つなのか、それとも、この場所にあるすべてなのだろうか。」

その答えは、人それぞれ違うのだと思います。そして私は、あの日の旅を終えてから、自分の心が少しだけ広くなったように感じています。いつか、またこの美術館を訪れたいと思います。そのときも、絵は静かにそこにあり、訪れる人を待っているのでしょう。でも、その絵は、自分が誰かの世界の見方を変えてしまうことを、きっと知らないのだと思います。

写真12. 記念カード

(Written by AONE‐1)