“分からない”からこそ面白い!! -ミュージアムのミステリー展を鑑賞して-

 私は先日、兵庫県立美術館の「県立ミュージアムズ連携企画 ミュージアムのミステリー」展を訪れました。展示室の中は「神秘」「不思議」「謎」「怪奇」の各テーマごとに分けられていました。

 まず、入ってすぐに目を惹かれたのは東山魁夷の「森の幻想」です。森の中でドレスを着た人が踊っている様子が描かれた作品で、儚く美しい印象を受けました。

 一方で、暗い色合いや、森がどこまでも続いているような描写には、どこか不思議で不安にさせる雰囲気も感じられました。そのため、この作品は今回の展示のテーマである“ミステリー”を象徴する作品だと感じました。

 東山魁夷「森の幻想」 1971年 兵庫県立美術館

 “ミュージアムの不思議”の展示室には立体作品が多く、不思議さの中にも、どこか面白く楽しい雰囲気がありました。

 特に印象に残ったのが籔内佐斗司の「犬モ歩ケバ」です。

 この作品は、美術館の近くにある公園にも同じ作者・同じ作品名のものがあるため、以前からよく知っていました。しかし、今回展示されていた作品は、公園にあるものよりもさらに本物の犬に近い姿につくられていました。また、壁から飛び出してきて、そのまま壁の中へ入っていくかのようなデザインになっていました。

 同じ作品名なのになぜ異なる形につくられているのか、なぜ壁から出入りするようなデザインなのかなど、さまざまな疑問が浮かびました。不思議でありながら、どこか面白く、かわいらしさも感じられる作品でした。

籔内佐斗司「犬モ歩ケバ」(部分) 1989年 兵庫県立美術館

 “ミュージアムの謎”の展示室には、大岩オスカールの「www.com」が展示されていました。

 この作品は、私が小学生の頃に県立美術館のイベントに参加した際、最も気になった作品として選んだもので、その後も作者と作品名を覚えているほど印象に残っている作品です。当時は、ただ純粋に「なぜお肉が国の形をしているのだろう」と不思議に思ったことが、作品を強く印象に残すきっかけになりました。

 しかし、今回あらためて作品を見ても、なぜ作者はお肉を使って国の形を表現したのか、なぜ作品名が「www.com」なのか、国際情勢やインターネット社会と関係しているのかなど、さまざまな“謎”が浮かび、非常に興味深く感じました。

 大学生になり、様々なことを学んだうえで、改めて作品を鑑賞したことで、小学生の頃とは違った視点から作品を見ることができました。

大岩オスカール「www.com」 2003年 兵庫県立美術館 ©Oscar Oiwa Studio

 また、県立美術館は普段、絵画作品を目にする機会が多いですが、今回の展覧会では兵庫県内の他のミュージアムからも作品や資料が集められていたため、歴史や自然科学の資料や昔の陶芸作品など、普段とは異なるジャンルのものも多く展示されていました。昔から言葉遊びが存在していたことが分かるユニークな「鳥のはんじもの」や、磁器でできているとは思えないほど繊細につくられた「白磁貼花菊文龍形壼」など、魅力的な作品が数多くありました。

歌川国盛「鳥のはんじもの」 1847‒1852年 兵庫県立歴史博物館(入江コレクション)

「白磁貼花菊文籠形壺」(出石) 1897‒1906年 兵庫陶芸美術館
(後方)グループ<位>「非人称人間」(部分) 1967年/2004年 兵庫県立美術館

 さらに、会場にはワークショップコーナーも設けられており、自分で作品をつくって展示できるようになっていました。私が訪れた際にも、何人かの小さな子どもたちが楽しそうに作品をつくっていました。そのほかにも、鑑賞ガイドや展覧会限定キャラクターなど、子どもにも分かりやすく、楽しみながら作品を鑑賞できる工夫が多く見られました。子どもから大人まで、年齢を問わず楽しみながら芸術や歴史・自然史などに触れることができる展覧会となっていました。

 今回の展覧会は“ミステリー”がテーマだったため、不思議に感じたり、すぐには理解できなかったりする作品も多くありました。

 しかし、分からないことがあるからこそ、「なぜこのように描いたのだろう」「作者は何を伝えようとしているのだろう」と気になり、作品について深く考えるきっかけとなりました。

 作者の意図が明確に分からないからこそ、自分なりにその意味を考えたり、鑑賞者それぞれの解釈に委ねられたりする部分があります。そうした“ミステリー”そのものが、作品や資料を鑑賞する面白さの一つなのではないかと考えさせられる展覧会でした。

(Written by ナツメグ)