博物館の展示品じゃないヤツら

博物館・美術館に行ってきたというと「すごいね!」とよく言われる。この場で一つ訂正しておきたいのが、私だって別に作品に詳しいわけではないのだ。正直良さがわからないことだってあるし、歴史的背景や作者についての知識もほとんどなく、作品の意図をしっかり考えることは少ないし、その素晴らしさや意義について明確な答えを知っているわけもない。

それでも私が足を運ぶのは、博物館という場所で「ナニか」に思いを馳せることが好きなのだ。別に作品のすごさが分からなくとも楽しめるし、むしろ知識ばかりあっても現物と繋がらなければ面白くないと考えている。そんなわけで、今回足を運んだ歴博の特別展で個人的に気になった「作品じゃないモノ」をいくつか紹介しようと思う。

1 椅子

いきなりなんの話かと思うだろう。展示室の椅子の話である。 この椅子は特別展展示室内に置かれている休憩用の椅子なのだがこれが個人的にめちゃくちゃ心地よかった。言ってしまえばそれだけの話だが、基本立ちっぱなしで鑑賞する博物館では低反発で沈み込むような座面にいつもの倍くらい感動する。




対して職員の方が座るための椅子は、普通のオフィスチェアである。流石に座ることはできないので遠目から確認しているが、どうにも硬そう。少なくともこの椅子よりは硬いよなあ、と思いつつボーっと目の前の作品を眺めること10分弱。ちょっと足が痛くなっていた。

2 花押

※姫路市立城郭研究室蔵(酒井家資料)

今度は作品の中にある、特徴的なものに注目してみた。「花押」と書いて「カオウ」と読み、【自署の代りに書く記号。その形が花模様の如くであるところから花押とよばれた】らしい(国史大辞典参照)。簡単に言えば昔のサインだ。写真を見てわかる通り、花押部分は文章部分に比べてとにかく丁寧に綺麗にはっきりと描かれている。実際に見ると印刷でもしたのかと思うくらいに手書きらしさを感じさせない。

私が講義を受けていた教授が偶然にもこの博物館の関係者であったため、講義終わりにちょっと聞いてみたら担当学芸員の方から返事をいただいてしまった。私は「花押ってスタンプ?手書き?」くらいの気持ちで尋ねてみたのだが、どうやらスタンプが実際に残されているらしくスタンプの可能性が高いとのこと。いや、スタンプにしても相当綺麗に押している。正確なことはまだわからないとのことで検索アプリに頼ってみると、確かに手書き説やスタンプ説、中を塗りつぶした説など様々であった。

3 図書室

この歴博、図書室が存在している。一階常設展の端にあるためかあまり人はおらず閑散としていたが、そこには図録や図鑑、子供向けの歴史漫画など“歴史博物館”の名に恥じぬ蔵書がそろう。個人的には、一般的な書店や図書館では閲覧できない特別展の図録が配架されている点が面白い。図録にはその展覧会で展示された展示物がまとめられているのだが、中々お値段が張るのだ。少なくとも、アルバイトをしていない大学生の身でホイホイ購入していたら破産まっしぐらである。遠方の博物館はめんどくさい……という時も、図録をみれば面白そうな展示の一つや二つ見つかるはず。せっかくなら一冊手に取ってみてほしい。

~おわりに~

ここまで展示品にはほとんど関わりのないことを書いてきたが、私が博物館で見ているのは大体こんなところである。作品をじっくり見ることは当然だが、それ以外に見ているところはだいぶ適当なのだ。もし博物館に足を運ぶ機会があれば、展示品以外のものにも目を向けてみると新しい発見があるかもしれない。

                             (Written by A.S)