にしきた花だより 第86号 アカシアと火薬と雛祭り

にしきた花だより 第86号 アカシアと火薬と雛祭り

 ギンヨウアカシアは、オーストラリア原産で、ミモザあるいはミモザアカシアとも呼ばれます。一枚目の写真です。北山緑化植物園で撮りました。名前にふさわしく、黄金色の花序を房状につけて美しいですね。

 さて、アカシアはマメ科の植物で、根に根粒菌(こんりゅうきん)が共生しています。根粒菌は、マメ科植物などの根に根粒を形成し、その中で大気中の窒素 N2を、ニトロゲナーゼという酵素によって還元して、アンモニア NH3にします。

 アンモニアは、宿主のマメ科植物に供給され、体をつくるアミノ酸などの材料になります。根粒菌には宿主から光合成産物が供給されることにより、give and takeの関係が成立します。

 ところで、全世界のアンモニアの年間生産量は、根粒菌などの生物による窒素固定が1.8億tです。工業生産では1.6億tで、そのうちの8割が肥料用であると言われています。(2010年調査)

 工業生産では、ハーバー・ボッシュ法が主に使われ、窒素N2からアンモニアを合成します。研究者のフリッツ・ハーバーは、この功績で1918年にノーベル化学賞を受賞しています。当時ヨーロッパでは、産業革命による人口増大で、農産物の需要が劇的に高まりましたが、それをまかなう窒素肥料が不足していました。この問題をフリッツ・ハーバーは解決したのです。

 しかし、ハーバーには、もう一つの顔があります。戦争に必要な火薬や毒ガスの生産に、大きな役割を果たしました。この研究に対し、化学の博士号を持つ妻クララは強く反対し、1915年に自殺する事で抗議します。その後、祖国ドイツは第一次大戦で敗戦を迎えることになります。

 さらに時が過ぎ、ドイツではナチス政権が成立します。その為ドイツの科学界に多大な貢献をしたハーバーも、ユダヤ人であるが故に国外追放にあいます。最期まで、最愛の国ドイツに迎え入れられる事無く、ライン川を挟んで、目と鼻の先にあるスイス・バーゼルで、その一生を終えることになります。

「 雛(ひな)二つ 桃一枝や 床の上 」  子規

 今日3月30日は、旧暦(2017年)では、3月3日桃の節句になります。二枚目の写真は桃の花です。北山緑化植物園で撮りました。
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