天を仰いで 621 心の花

   カ ン ナ
                 金井 直

 あれが まともに 見られるか
 みつめて いられるか
 あの かぎりない 羞恥にたえた 表情を
 追いつめられて
 もう そのほかには ないという 色の ふかさを
 みずから ひきだした心臓を みずからの手で ひきさいて
 ほら これだよ と突出したような
 いたましさを はるかに超えた 苦痛を
 ひとときは 見ることができても
 ひとたび そこから 眼を そらせば
 貧血を おこしたように めまいのするものを
 そこに 在るものは  もはや
 嘘をつこうとして ついに つききれなかった  真実の やさしさ
 四方へ 幾枚もの 舌を 出したまま
 ひっこめることの できなくなった きびしさ
 しかし
 あの したたるような 深紅にも まして
 落日に似た 悲哀が はげしく さわいでいる
 誰にも 知られない 胸の中で

職員室前の裏庭にはカンナが何株か植わっていて、毎年花が咲きます。今日、ふと見ると、雨に濡れていたので撮ってみました。

10年以上前、東京の文京区でレンタサイクルを借りて、金井直さんの家を探したことがあります。どこの駅で自転車に乗ったのか覚えていないんですが、 グーグルMapなんて便利なものはまだなかったはずです。 小石川植物園や白山神社、根津神社、東大赤門などを巡りながら、迷いに迷って結局見つけられませんでした。

御自宅にある資料館に行きたかったんです。「木琴」が中学校の教科書にも載っているので、金井直という詩人を知っている人も多いでしょう。他に「散る日」や「あじさい」、「薔薇」など、一度読んだら二度と忘れられない花の詩がいくつかあります。カンナはこの詩があるから好きな花です。

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