天を仰いで 506 よみがえる鬼貫

2年の教員が冊子を持ってきてくれました。表紙には「伊丹市制施行80周年記念 鬼貫80句」と書かれています。柿衞(かきもり)文庫さんが実施された同名の鑑賞文コンテストの受賞6編と最終選考に残った65編が収録されています。そこに、県高生の作品が優秀賞に選ばれています!さらに、最終選考には31編も選ばれているんです!

驚きました。2年生が取り組んでくれたのですが、プロが選んだ上島鬼貫の句を80作も読むだけでもすごいことです。そこから自分の気に入った句を一つ選ぶのも大変だし、思い思いの視点で読み解いて鑑賞文を書くのはもっと大変です。しかも、どれもとても面白い。優秀賞、船本久留弥さんの作品を引用します。

鬼貫句「冬はまた夏がましじゃといいにけり」

私はこの句を、冬には「冬の寒さより夏の暑さの方がましだ」と言い、また夏には「夏の暑さより冬の寒さの方がましだ」と言っている人を詠んだ句だと解釈しました。誰でも、一回は感じたことがあって、厳しい現実と楽しかった過去のことを比べてぐちをこぼしている人を想像することができ、くすっと笑うことのできる句だと思いました。ある日常のひとコマには、楽しく感じれることや面白いことがつまっていると気付かされました。

選者のお一人である柿衞文庫理事長、坪内稔典さんは講評に「すぐれた鑑賞文に共通しているのは、現在の自分の位置において俳句を受け止めていること。つまり、昔の鬼貫が時間を超えて鑑賞者の今へ来ているのだ。」と書かれていますが、まさにそのとおりの作品です。「夏のほうがましだなぁ」と嘆く鬼貫が「今」によみがえります。最終選考作の中から校長が一つ選ぶなら、末松凛さんの作品です。

鬼貫句「秋風の吹きわたりけり人の顔」

秋風は少し冷たくて紅葉が終わった落葉とともに私たちの日常生活に吹いている。秋風は吹き続けるが私たちの顔の表情は変わらない。風が吹いた前、吹いた後も同じ顔だ。私は表情は変わっていないが秋風によって心はきれいになっていると思う。葉は枯れて新たな一歩を踏み出す。私たちも一緒で心をきれいにして新たな一歩を歩き出すのだと思う。

読んですぐ、大好きな八木重吉の「顔」という詩を思い出しました。「どこかに/本当に気にいった顔はないのか/その顔をすたすたっと通りぬければ/じつにいい世界があるような気がする」。重吉には『秋の瞳』という題名の詩集もあって、秋のイメージを持っています。この鑑賞文のおかげで、鬼貫だけでなく、重吉まで「今」にやってきてくれました。

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