天を仰いで 499 「は」の力

こういう空を見ると、清少納言の「春は曙」という言葉を思い出し、日本語の不思議を思います。この言葉、英語に訳そうとすると、たちどころに困ります。普通、「AはB」という日本語は、「A is B」と訳します。試しにGoogle翻訳に入れてみると、やはり“Spring is dawn(曙)”と出てきました。しかし、これでは意味不明です。

In spring, it is the dawn that is most beautiful.

イギリスの翻訳家、アイヴァン・モリス氏による英訳です。よくわかりますが、逆にGoogle翻訳で和訳してみると、「春に最も美しいのは夜明け(曙)です」となってしまって、「春は曙」とは訳してくれません。つまり、モリス訳は意訳です。なぜそうなるかというと、係助詞「は」の働きが大きいからだと思います。「は」が入っている日本語を訳すのは一筋縄ではいきません。

驚くことに、Google翻訳は「象は鼻が長い」、「彼は明日から旅行に行く予定だ」などは、きちんと“Elephant has a long nose”、“He will go on a trip from tomorrow”と意訳してくれます。「春は曙」同様、「コンニャクは太らない」や(食堂で)「僕はウナギ」などをいつか意訳してくれる時が来るのでしょうか。

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