天を仰いで 449 明治の家屋

本館中央階段の掲示スペースに生徒のプリントが何枚か貼り出されています。2年現代文の『こころ』でした。そのうちの一枚に、小説の舞台になった家屋の透視図が描かれています。生徒のときも、教師のときも、何度も読んだ場所です。懐かしい気がして、しばらく眺めてしまいました。

「私」が暮らす右上の部屋は、床や違い棚がしつらえられているので、きっと「座敷」です。南に庭を配して日当たりの良い、主人が起居したりする部屋です。その左は「次の間」です。座敷からいつ声がかかってもいいように召使が控える室です。そんな部屋にKは住んでいました。2人の部屋を隔てているのが、やがて血潮がほとばしるあの襖です。

座敷を中心とした書院造の住宅は江戸時代から明治時代まで続きましたが、大正時代に起こった「生活改善運動」によって廃れました。現在は伝統家屋以外ではほとんど見られません。「私」は「明治の精神」に殉じて自殺しますが、それは宿るべき明治の家屋がなくなるからかななんて思いました。令和の家屋に宿る令和の精神の物語を読みたくなりました。

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