天を仰いで 372 素晴らしい校訓

本校の校訓は、明治39年発行の教科書『中学校修身訓 巻3』から引用されたと『兵庫県立伊丹高校100年史』に記されています。「修身」とは今でいう「道徳」です。どんなふうに書かれているのか、以前から気になっていました。ひょっとしたら現物があるかもしれないと思って、80周年記念館に探しにいってみると、本棚にしまわれていた段ボールの中から簡単に見つかりました。

著者は文学博士、坪内雄蔵。って誰?と思ってググったら、驚くなかれ、坪内逍遥の本名でした。逍遙といえば『小説神髄』を著し、シェークスピアの戯曲を訳した人です。てっきり文学者だとばかり思っていましたが、47歳から54歳までの約8年間、旧制早稲田中学校で教頭、校長を歴任しており、「教育者が本業」と自認していたそうです。

逍遙は教頭に就いた時、自分の仕事の第一は生徒へ道徳を教えることだと考えました。ところが、当時は西洋の新しい考え方が流入し、これまでの日本や東洋の考え方が動揺し、混乱しているときでした。適切な教科書もなく、苦労して新しい考え方に立って道徳を教えたといいます。その時の経験をもとにして、後に書いたのが『中学校修身訓』でした。

己を修むるには誠実を第一とし、克己力行(りっこう)を第二とし、他人に交わるにも誠実を第一とし、忠恕博愛を第二とす。誠実とはかりそめにも詐(いつわ)り欺(あざむ)くことなく、かりそめにも我が心に疚(やま)しく思うがごときをせぬをいう。 ※ 現代の漢字と仮名遣いに直しました。

巻3は全20節からなり、第1節は「道徳」です。そこに、道徳の根本として「誠実、克己、忠恕」の校訓が出てきます。最も重視されていることは「誠実」です。まずなによりも他人はもちろん、自分自身をもあざむかないこと。その上で、自分が正しくあるには、「克己力行」(努力して自分にうち克つこと)、他人と付き合うには、「忠恕博愛」(すべての人を平等に思いやること)がそれぞれ大切だと述べられています。

第2節は校訓そのもの、「誠実と克己と忠恕」という題です。儒教も仏教もキリスト教も、すべての教えの根本にはこの三つがあると言います。東洋とか西洋とか、歴史が古いとか新しいとか、そんなことは関係ないんだとまで言いきっていて気持ちがよいくらいです。こんなにまで強い思いが込められた言葉だと知り、とても嬉しくなりました。やっぱり本校の校訓は素晴らしい!

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