12月19日(月)の2・3校時に本校体育館で、NPO法人「こどもの里」理事長荘保共子さんを講師に招いて、「『こどもの里』~子どもの輝きを守る39年の活動」という演題で全校生徒を対象に人権講演会を開いた。

「こどもの里」は、日雇い労働者の街西成区あいりん地区(通称・釜ヶ崎)で39年前に開設された。ここは、学童保育や緊急一時宿泊、親と暮らせない子供向けのファミリーホームなどの居場所を保障する、子どもの支援拠点の先駆け的な存在である。荘保共子さんはこの「こどもの里」の生みの親だ。大学卒業後、あいりん地区で子どもに勉強を教えるボランティアをしたのがきっかけとなって、1977年に子どもの遊び場を提供したいと「こどもの広場」を開設、80年に現在の場所に移設して「こどもの里」と改称。荘保さんは、「子どもには、どんな困難な状況にあっても生き抜こうとする力を持っている」と語る。本校生にも、「里」の活動から生き抜く力を呼び起こしてもらいたいとの思いから講師に選んだ。

1校時は各ホームルームで、10月16日付の毎日新聞「安心できる場所―『こどもの里』の36年」の記事を使って事前学習を行い、講演会に臨んだ。まず映像で、「こどもの里」の毎日の活動の様子を紹介する中で、[①必要とする人は誰でも利用できる場であること②遊びの場、休息の場であること③学習の場であること④利用する子どもたちや保護者の抱える様々な問題を受け入れられる場であること⑤より弱い立場の友達と社会の谷間におかれている友だちと共に助け合って生きていいける場であること]という「こどもの里」の基本的な考えや運営方針が示された。遠足や劇での子どもたちのはち切れるような笑顔と、物事に取り組む真剣な眼差しが非常に印象的だった。
「里」の大きな特徴は「緊急一時宿泊機能」を持つことで、親に虐待された子どもが「泊まらせて」と助けを求めてくれば、いつでも安心して眠ることのできる場所を提供していることだ。親に捨てられたり、虐待を受けたりしながらも、この「里」で暮らし、自立していった子どもの姿が生々しく語られ、痛々しく感じた。その一方で、日本人は「自立」という言葉の概念を、他人の援助を受けずに自分だけの力で生きていくことだと考えるが、「自立」とは生き辛いときに他人に援助を求められることだ、また、子どもは支えがあれば、必ず一人で生きて行く力を持つようになるものだという言葉に勇気づけられた。さらに、荘保さんは薬物中毒に陥ったり、家庭崩壊を招いた親たちを責めるのではなく、その背後にある貧困や社会の問題点を指摘した。「里」において「お父さん、お母さんの休息の場」を掲げているのは、こどもを守るためには、その親を守らなければならないという考えからだ。
本校生の中にも、この格差社会の中で、厳しい生活環境、教育環境にある生徒が少なからずいる。また、全く自分に自信がない、いわゆる自己肯定感の持てない生徒もたくさんいる。
荘保さんはパワーポイントを使って、18歳未満の子どもの貧困率16.3%、母子家庭の貧困率が66%など、さまざまなデータですさまじい格差社会の実態を明示してくれた。このあたりは生徒たちには難しかったかもしれない。最後に、「子どもの権利条約」の4つの柱-生きる権利、守られる権利、育つ権利(教育を受ける権利)、参加する権利―を説明して、生徒たちにエンパワーして(力を与えて)くださった。

人権教育部