寒さの中にも、日差しに春の力強さを感じ始めた今日の佳き日に、兵庫県立伊丹西高等学校第45回卒業証書授与式をかくも盛大に挙行できますことを誠にうれしく思います。
本日はご多忙の中、多くのご来賓の皆様、並びに、多くの保護者の皆様にご臨席を賜りましたこと、高いところからではございますが、厚く御礼申し上げます。
さて、保護者の皆様におかれましては、この3年間、本校の教育活動にご理解、ご協力をいただき、誠にありがとうございました。時に優しく、また時に厳しく、お子様方を支えてこられた3年間が、本日、本校を巣立つお子様方の勇姿につながっていると思うと、喜びひとしおのことと存じます。
改めまして、卒業生のみなさん。ご卒業おめでとうございます。今、3年間を振り返って何を思いますか。高校生活を長く感じた人、短く思われた人、それぞれではないかと思います。しかし、この3年間はみなさんにとって間違いなく貴重な、経験に満ちた月日だったと思います。
楽しかったこと、辛かったこと、思い通りに行かなかったこと。長い人生の中のたった3年間ですが、みなさんは様々な経験をしてきたはずです。そのどれもがみなさんの血肉になっていることと信じます。
これからの人生でも、様々なつまずきを経験することでしょう。そんなときに次に踏み出す勇気を与える言葉を、みなさんに贈りたいと思います。
昨年、3年連続でレコード大賞に選ばれたミセス・グリーンアップルの歌に「僕のこと」という楽曲があります。大森元貴さんはこの曲を平成30年に開幕した第97回全国高等学校サッカー選手権大会の応援歌として書き下ろしました。彼が「すべての人たちを肯定する曲」と語っているとおり、この曲には、つまずいて立ち上がれなくなった人たちをも支える歌詞が綴られています。
彼自身が中学時代に不登校を経験し、追いたてられるように作曲に励んだ月日が、この歌には凝縮されていると私は感じています。
歌詞に「奇跡は死んでいる」、「努力も孤独も報われないことがある」それでも「今日まで歩いてきた日々」を人々は「軌跡」だと呼ぶ、とあります。大森さんは2つのキセキを重ねながら、奇跡は起こりえないことではなく、苦労して歩み続けた道のり、つまり、あなたの生きた証こそが奇跡なのだと歌っているのです。
人生は平坦な道ばかりではありません。悲しみや苦しみ、辛さが壁になってみなさんを立ち止まらせることがあるでしょう。でも、そこで道が終わるわけではない。乗り越えた先にみなさんの未来は広がっているのです。
もう一つ、私がみなさんに伝えておきたい「思い」があります。その「思い」が詰まった詩をみなさんに贈り、私の言葉に代えたいと思います。
谷川俊太郎 「生きる」
生きているということ
いま生きているということ
それはのどがかわくということ
木もれ陽がまぶしいということ
ふっと或るメロディーを思い出すということ
くしゃみをすること
あなたと手をつなぐこと
生きているということ
いま生きているということ
それはミニスカート
それはプラネタリウム
それはヨハン・シュトラウス
それはピカソ
それはアルプス
すべての美しいものに出会うということ
そして
かくされた悪を注意深くこばむこと
生きているということ
いま生きているということ
泣けるということ
笑えるということ
怒れるということ
自由ということ
生きているということ
いま生きているということ
いま遠くで犬が吠えるということ
いま地球が廻っているということ
いまどこかで産声があがるということ
いまどこかで兵士が傷つくということ
いまぶらんこがゆれているということ
いまいまが過ぎていくこと
生きているということ
いま生きているということ
鳥ははばたくということ
海はとどろくということ
かたつむりははうということ
人は愛するということ
あなたの手のぬくみ
いのちということ
私事ではありますが、本日は私の校長としての最後の卒業式、教員生活の結びとなる日でもあります。37年間の思いを託し、最後の式辞といたします。
令和8年2月27日
兵庫県立伊丹西高等学校 校長 愛川 弘市
