暖かな春の日差しの中、校庭の桜が誇らかに花弁を広げる今日の佳き日に、兵庫県立伊丹西高等学校第四十七回入学式をかくも盛大に挙行できますことは、私たち教職員にとりましても誠に大きな喜びでございます。
本日、お忙しい中、ご臨席を賜りましたご来賓の皆様、保護者の皆様に高いところからではございますが、御礼申し上げます。
改めまして、新入生のみなさん、ご入学おめでとうございます。チーム「西高」へようこそ。新しい制服に袖を通して、みなさんの心も引き締まっているのではないですか。本校としてもリニューアルされた制服と四十七回生の入学を機に「西高」らしさをさらに高めていこうと考えています。在校生たちとともに意義ある三年間を歩んでいきましょう。
ところでみなさんは、本校の校訓を知っていますか。正門を入って左側に校訓の碑があり、そこには「克己」「協調」「創造」と刻まれています。「克己」とは己の弱さに打ち勝つこと、「協調」は仲間とともに手を携え、課題解決に取り組むこと、「創造」は「克己」「協調」の過程を経て、新たなものを創り出すことを意味します。この思いはそのまま校歌の「己(われ)に打ち剋つ不撓(ふとう)の意志(こころ)」「交(かたみ)に恕(おもう)調和の誓い」「未来を創造る無限の志気(ちから)」という言葉に込められています。本日、生徒会や部活動の有志による校歌披露がありますので、校訓の意味を思いながら聞いてもらいたいと思います。
時代は今までにない速度で変化しています。今まで当たり前であったことが当たり前でなくなる時代。私たち人間だけに与えられた「思考」というと尊い行為が、AIに取って代わられようとしている時代です。しかし、AIにできるのは、膨大な情報から関連する単語を結合させるという作業に過ぎない。そこには人間が様々な感情を基礎として積み重ねてきた経験や論理はないのです。言い換えるなら、AIに使われないために、私たち自身がAIの持たない「思考」の力を高める必要があるのです。
新入生のみなさん。未来は決して暗くはありません。しかし、明るい状態で用意されているわけでもありません。みなさん自身が明るく豊かな未来を作り上げていくのです。
冒頭に桜の話をしました。桜は満開の時だけを見るものではありません。散りゆく時の「桜吹雪」も、川面を覆う「花筏」も、散り果てた後の緑美しい「葉桜」も、そして秋の「紅葉」も。たくさんの見所にあふれている。私たちの周りには、見落としてしまいがちな「美しさ」があふれている。その美に心動かすとき、私たちの「思考」の礎となる豊かな、そして鋭敏な「感情」が、確かな未来を創り上げていくのだと、私は信じています。
そんな私の思いを託し、四十七回生のみなさんに、茨木のり子さんが自身に向けて書いた詩「自分の感受性くらい」を贈りたいと思います。
ー 中略 ー
最後になりますが、私たち教職員は、四十七回生が豊かな人生を歩めるよう、優しく、時に厳しく教育活動を進めて参ります。本日ご臨席賜りましたご来賓の皆様、保護者の皆様には、生徒たちの成長をお支えいただくとともに、今後とも本校の教育活動にご理解、ご協力を賜りますようお願い申し上げ、式辞といたします。
令和七年四月八日
兵庫県立伊丹西高等学校長 愛川 弘市
