ピアニストのフジコ・ヘミングさんが亡くなった。92歳。彼女が注目を浴びたのはなんと60代のころ。耳の病を乗り越えての活躍だった。
彼女の代表曲はなんといっても「ラ・カンパネラ」。カンパネラはイタリア語で「小さい鐘」のこと。ラは少し離れた場所を示す「あの」という意味だそう。
細かな指の動きで奏でられるリズムは、寂しげな旋律と相まって、美しく心を打つ。フジコ・ヘミングさんの人生も曲に深みを添える。
花好きの人はもうお気づきかもしれないが、釣り鐘型の、可憐な花弁を持つカンパュラという名の花がある。日本では釣鐘草や風鈴草と呼ばれる。
宮沢賢治の童話「銀河鉄道の夜」に登場する「カンパネルラ」もこの花から名づけられた。いや、ひょっとすると音楽好きの賢治のこと、この「ラ・カンパネラ」に着想を得たのかもしれない。
「ほんとうのさいわい」を求めて銀河を旅するジョバンニとカンパネルラ。フジコ・ヘミングさんの名演とイメージが重なるのは私だけだろうか。