中庭の藤棚が、藤の花でいっぱいになっています。
日本人形の「藤娘」を始め、昔から藤は日本人になじみの深い花。改めてみてみると、マメ科の植物であるのがよく分かります。花の後には「さやいんげん」のような実ができます。


藤棚にいるとぶんぶんとクマバチの羽音がします。見た目がゴツいので恐怖を感じますが、実は蜂の中でもおとなしい部類。危害を加えない限り襲ってくることはありません。

藤の花を見ていると思い出されるのが正岡子規の短歌。家人が花瓶に挿した文机の藤の花を、病床で眺めた有名な歌です。
瓶にさす 藤のはなぶさ 短かければ 畳の上に とどかざりけり
結核の末期、脊椎カリエスで横向きに伏せていた子規の目に、美しい藤の花はどのように映っていたのでしょう。いや、短いが故に見ることさえかなわなかったのかもしれません。気づき、詠嘆の助動詞「けり」が、すべてを物語っているように思われます。