進路について

 自分の進路について意識し始めたのはいつだろう。振り返ると、やはり高校に入ってからか。その頃は、あるドラマに触発されたこともあって、小学校の先生になりたいと考えていた。

 小学生の時、分数の掛け算と割り算でつまずいてから、ずっと勉強が苦手だ。それまで、掛けると増えて割ると減る、と思い込んでいたのに、分数はその逆。掛けたら減って、割ると増える。いくら教えられてもその謎が解けなかった。そのうち、「理屈はいいから覚えろ」と言われ、その理不尽に辟易してしまった。

 高校でも同じだった。古典の授業で接続助詞の「ば」について習った時のこと。先生から「未然形に『ば』がつけば、順接仮定条件、已然形に『ば』がつけば、順接確定条件。覚えなさい」と言われ、日本語のはずなのに日本語として聞き取れなかった。途端に古典が嫌いになった。

 高校3年になって、自分みたいに勉強でつまずいて苦しんでいる子どもはきっといるだろうと思い、私が最初につまずいた小学校の教員免許が取得できる大学を志望することにした。

 これが進路に関する人生初めての挫折。勉強が苦手なのに大学に受かるはずがない。当然のごとく、1年浪人する羽目になった。その後、なんとか大学には合格したが、そこは小学校の教員免許が取れない大学。これが2度目の挫折だった。結果、その大学で取得できた教員免許を生かして、高校の国語の先生になった。

 その後も様々な挫折を繰り返したが、挫折してもくじけない思いのおかげで、今の私がいる。その思いとは、「勉強がわからない生徒の気持ちが、私にはわかる」ということ、そして、「そんな生徒のために寄り添いたい」という強い思いだ。